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ネタバレありのつぶやきへ

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*** 欧 州 映 画 紀 行 ***
                 No.012
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ 笑いと悲劇と変革のカオスへようこそ ++

作品はこちら
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タイトル:「女はみんな生きている」
製作:フランス/2001年 原題:Chaos
監督・脚本:コリーヌ・セロー
出演:カトリーヌ・フロ、ラシダ・ブラクニ、ヴァンサン・ランドン
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■STORY
平凡な主婦と、組織に追われる娼婦とが出会って、それぞれの人生を変えてい
くドラマチックコメディ。

エレーヌと夫のポールはパーティへ向かうため車を走らせていた。男たちに追
われる血まみれの女が、突然車の前に現れた。「お願い。扉を開けて」と必死
で頼む彼女を、ポールはドアロックをして拒む。ポールは面倒に巻き込まれた
くなくて、エレーヌが救急車を呼ぼうとするのもやめさせてしまう。車につい
てしまった血だけが気がかりだ。
翌日、事件が頭を離れないエレーヌは、片っ端から病院に電話をかけて助けを
求めた女の居場所を突き止める。女はノエミという娼婦。売春組織から命を狙
われている。エレーヌはいたたまれなくて、そのまま泊まり込んで介護を始め
ることにした。

ポールは自分を家政婦のようにしか思っていないし、息子はただ煙たがるだけ。
そんな家庭を抜け出して、介護する方にずっと強い興味をもったのだ。ノエミ
の身の上話を聞き、彼女の計画に力を貸すことにするエレーヌ……

■COMMENT
見どころいっぱいの楽しい映画だ。

まずはエレーヌが家族に翻す反旗。夫と息子の世話を焼いて、まったく感謝さ
れない。二人とも自分には無関心。自身も仕事をしていて、毎日が大忙しで過
ぎている。ノエミの介護をきっかけに、彼女は我慢をやめる。「これからはあ
なたたち自分でやってちょうだい」、この台詞に溜飲を下げる主婦は多いはず。

エレーヌのいない家庭では、洗濯ひとつ、アイロン掛けひとつできないポール
が大弱り。そうなる心当たりのある男性諸氏は、ちと胸が痛い。男女どっちか
の立場にならずとも、その右往左往ぶりが文句なしに面白い。だめっぷりが
チャーミングなのだ。
チャーミングな男性陣と言えば、父と息子のそっくりさも笑える。無関心な受
け答え、親を邪険に扱う様子、どちらも生き写しだ。ノエミの<プロ>の技に
ひっかかってすっかりメロメロになる父ポール、二股かけた恋人たちに結局は
反撃を食らう息子ファブリス。自分の思い出がちくりと痛い人もいれば、まわ
りにこんなヤツいるよと笑える人もいるだろう。

身売り同然の結婚を強いられる古いアルジェリア系家庭と、そこから逃亡した
ノエミ。逃亡後は娼婦になるしか道はなく、抜け出したくても抜け出せない。
現実の社会問題もきっちり見せてくれる。
そして、ノエミが組織をだまし討ちにして、自分は娼婦から抜け出そうという
サスペンスもあり。笑って、ハラハラして、ちょっと考えて、見終わって元気
になれる1本。

セロー自身が監督し、メリル・ストリープ主演での、ハリウッドリメイク版が
準備中とのこと。完成度の高い作品だし、わざわざ監督本人まで出ていってリ
メイクすることもないと思うんだけどなあ。

■COLUMN
わが「欧州映画紀行」では、基本的に、邦題にケチはつけないことにしている。
映画も商品だから、売れないとどうしようもないわけで、タイトルは大事な大
事なキャッチコピーだ。特にヨーロッパ映画なんて、人目にもつきにくい。原
題を忠実に表現することよりも、人に興味を持ってもらえるようなタイトルを
つけることの方が、時には大事になるだろう。
たとえばフランス映画ならとりあえず「恋」とか「恋愛」とかつけておく。安
易な気もするけれど、それに惹かれて観に来て、楽しんでもらえるならそれで
よい。お客さんがいなければ、日本に作品が入ってくることもなくなってしま
うのだから、マニアックな思い入れとか、ちょっとした語学の知識は横にどけ
ておくこととしよう。

今回の作品、原題は「Chaos(カオス)」である。主婦の出奔で家庭はめちゃめ
ちゃ、組織との戦いで人生は大混乱、ほんとにこの作品を良く表しているけれ
ど、それはすでに観た人間の言えることで、まだ観てない人に、「カオス」と
か「混沌」というタイトルを提示して、観たくなるかどうかは別問題だ。そん
なわけで、原題からはほど遠いが「『女はみんな生きている』いいタイトルじゃ
ない? 元気が出そうで」と思う。

ただし、である。「女は」と来れば「じゃ、男は?」となるのが、ふつうの感
覚。つまり、男として観るのか、女として観るのか、観る側にどっちかの立場
をとるように、誘導するんだな、このタイトル。それが証拠に、(って威張る
コトじゃないが)この<COLUMN>の欄を書くのに「私は女性としてこの映画を
どう感じただろう」と考え出してしまった。そしてさっぱり書けなくなった。

書けない原因を探って思い当たったのは、「女性として」なんて考えるのが間
違いだ、ということ。日頃からそんな発想をしている人なら、そういう見方も
面白いし、いろいろ感じ入るところもあるだろう。しかし私は「女性として」っ
て考えるのに慣れていない。そこから考えたら、「うーん、私なら、こんな風
に勇敢に行動できない」なんて反省をはじめて、元気がなくなってしまった。
(でもやっぱり邦題を責めてるわけではない。この欄を書き始めるまでそんな
ことには気づかなかったし。念のため)

この作品に限らず、女性・男性・既婚・未婚・年齢、色々な要素で作品の受け
止め方は変わってくるものだ。その違いを比べたり、話し合うのもまた楽し。
でも、最初から女(男)としてどう思う、と構えると、つまらないかもしれな
い。男でも女でも、この混沌の世界は楽しめるから!

■補足
なんとなく辞書的に「映画せいさく」は「制作」だろうと思いこんでいたので
すが、パンフレット等を見ても「製作」を使うのが一般的なようです。そんな
わけで、今回から「制作」ではなく「製作」と表記を改めました。こっそり変
えておいてもいいんですけど、「こっそり変えてる」て思われると悔しかった
りして。

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転載には許可が必要です。

編集・発行:あんどうちよ

Copyright(C)2004 Chiyo ANDO

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2004.9.13 原題を追加
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