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*** 欧 州 映 画 紀 行 ***
                 No.031
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ 大ツボ、小ツボ、はまって笑ったその先に、純な恋の物語 ++

作品はこちら
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タイトル:「ロベルト・ベニーニの Mr.モンスター」
製作:イタリア・フランス/1994年
原題:Il Mostro 英語題:The monster

監督・共同脚本・主演:ロベルト・ベニーニ(Roberto Benigni)
出演:ニコレッタ・ブラスキ、ミシェル・ブラン(脚本も担当)、
   ジャン=クロード・ブリアリ
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■STORY
ただのちゃらんぽらんな男が、突然連続レイプ犯に間違われ、警察に追い回さ
れるハイテンションコメディー。

ローマに暮らすロリスは、アパートの管理費を払わなかったり、ちょっとした
仕掛けをしてスーパーで商品をちょろまかしたり(要するに万引き)、せこい
悪事はするけれど、根は正直者である。
しかし、面白いように誤解が重なって、警察は彼をレイプ犯と断定。
婦人警官を使ったおとり捜査を開始する。

■COMMENT
しっとり、じんわり考えさせてくれる作品が続いたので、今回は、何も考えず
に笑ってスッキリできるものをご紹介。
「ライフ・イズ・ビューティフル」を見た人ならばぴんとくる、ロベルト・ベ
ニーニの、早口でめちゃめちゃなテンションでのギャグが、ここでもあそこで
もそこらでも炸裂の、楽しい楽しい物語だ。

もちろん、ただハイテンションでわめき散らかしているだけなら、観客に笑い
はおこらない。
笑いを創り出すことは、知的で綿密な作業なのだ。

例えばロリスがレイプ犯に間違われてゆく過程。色々な人が絡んで、ほんの少
しのタイミングのずれがおこって、確かに端から見たら、犯人に間違われるよ
ね、という状況が作られる。本当に「よくできてる」話だ。ただし、「リアル
さ」は追求しないこと! あり得ないことばかりが起きて、すぽんすぽんと、
誤解がはまっていく展開に素直に乗っかってみよう。

そしてロリスの、生活を快適にするちょっとした工夫の数々。ずいぶん手の込
んだ万引きや、彼を追い出しにかかる家主の撃退法、可笑しくてなんだかかわ
いい。

勘違いの塊みたいなプロファイリング(ミシェル・ブランがうまくはまってい
る)や、めちゃくちゃなおとり捜査。笑いの種はあらゆるところに蒔かれてい
るから、お好きなツボでどうぞ。
私はプロファイリング捜査官が最後の危険な賭に出る「作戦」がお気に入り。

真犯人はちゃんと判明するから、ミステリーファンにもおすすめ、かな。

■COLUMN
この笑いで満たされたコメディーの芯に、太く一本渡っているもの、それは、
おとぎ話の王子様とお姫様のような、純粋な恋愛劇である。

おとり捜査でロリスに近づく婦警を演ずるのは、ベニーニの実の妻であるニコ
レッタ・ブラスキ。ベニーニ作品には必ずミューズとして出演する。
自分の妻をここまで純粋なヒロインに仕立てられるベニーニとはどんな情熱的
な人なんだろう。この夫婦、ふだんどんな風に暮らしているんだろうか、と下
世話なことも考えてしまう。ケンカしないのかしらん、とか、子どもみたいな
疑問まで抱く。ベニーニ作品の中で彼女はいつも、それくらい徹底した<絶対
女神>なのだ。

笑いのシーン、ギャグのシーンがよく練られているから、かなりひねりが効い
ている印象を持つ。けれど基本に流れているのは、古今東西誰にも共通する、
子どもでもわかる一途な恋だ。

私は実のところあんまり知らないのだけれど、世の中純愛ブームなのだそうだ。
「純愛」ていう言葉はいまどき使わないのかな。「冬ソナ」とか「セカチュー」
とか、いずれも見てなくて勝手な解釈をするのもいけないけれど、いろいろ策
を弄するものや、倒錯気味の恋愛や、ありとあらゆるパターンが出はらって、
「愚直に一途に人を愛する」ところにみんな戻ってきたのかもしれない。

寒さも一入、暮れのあわただしさも手伝って、心が窮屈になるとき。
思いっきり笑わせてもらって、最後に気づいたら、王子様とお姫様の恋物語に
ほんわりやられてしまいましたとさ。そんな時間を過ごすもいい。

そんなわけだから、純愛ファンにもおすすめ、かな。


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編集・発行:あんどうちよ

Copyright(C)2004 Chiyo ANDO

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