一覧へ ←前へ →次へ 登録フォーム HOME


============================================================

*** 欧 州 映 画 紀 行 ***
                 No.043
============================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ なんでまた、こんな男を好きになっちゃうんだろうね ++


作品はこちら
--------------------------------------------------
タイトル:「バルニーのちょっとした心配事」
製作:フランス/2000年
原題:Barnie et ses petites contrariétés
英語題:Barnie's Minor Annoyances

監督・共同脚本:ブリュノ・シッシュ(Bruno Chiche)
出演:ファブリス・ルキーニ、ナタリー・バイ、マリー・ジラン、
   ヒューゴ・スピアー
---------------------------------------------------
  ケータイ等に作品の情報を送る
■STORY
バルニーはフランス・カレーに住み、毎日ロンドンへユーロスターで遠距離通
勤をしている。
家には最愛の妻リュシーと娘がいる平凡な男だが、彼にはちょっとした隠し事
があった。
それはロンドンに2人の愛人がいること。1人は若く美しいフランス人女性
マルゴ、もう1人はハンサムでインテリのイギリス人男性マークだ。

そんなバルニーが45歳の誕生日を迎える。彼を愛する3人からのプレゼントは、
同日、同時刻のオリエント急行ヴェネツィア行きの切符。
さて、どうする、バルニー!

■COMMENT
何も考えずに笑って楽しめるコメディ。
ドタバタコメディと言ってしまってもいいが、やはりそこはフレンチコメディ。
しっかり大人の事情がからんで、ちょっとしたひねりがきいている。
ロンドン、カレーと英仏海峡をまたにかけ、さらに豪華寝台列車の代名詞オリ
エント急行なんかも飛び出して、ずいぶん豪勢な舞台装置だが、まあ、中身は
小さい痴話げんか、というギャップなんかも、ひねりのひとつだろう。

こうしたコメディによくあるように、なんだかいろいろな偶然が面白いように
重なって、妻も含めた3人の愛人が鉢合わせ。バルニーが必死に取り繕うとこ
ろ、思わぬ方向に展開していくさまを、素直に笑えばよい。腹がよじれるとは
言わないが、疲れて笑う気なんか失せていた心も、悲しいことがあって口をと
がらせている顔にも、強引に笑いをもたらしてしまう力を、この作品は持って
いる。

恋人たちが鉢合わせして必死に切り抜けようとする、こういう役は、すごく二
枚目の役者がやっても説得力がなくて、三枚目がやったらリアリティがない。
「なんでだかよくわからないけど、セクシーだよね」という不思議な魅力をた
だよわせていないといけない。その点で、なんでまたこの男がそんなにモテる
かね、といったふうのバルニー役、ファブリス・ルキーニがはまっている。

せこくて愛すべき痴話げんかに対比される、豪華な装置、ヨーロッパの鉄道の
旅を垣間見られるのも楽しい。優雅な客室やバーが見られるオリエント急行車
内はもちろんのこと、バルニーの仏英通勤列車も興味深い。長い時間電車で揺
られることで世界的に有名な(本当?)日本のサラリーマンも、電車で国際通
勤はできないからなあ。笑わせながら、旅情もくすぐってくれる作品である。

オリエント急行に興味が出た人はオリエント急行公式ホームページ
この作品に登場するのは、
おそらくこの「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス」。

■COLUMN
3人から同じ列車の切符がプレゼントされる、というこの物語だが、私たちの
現実世界では、切符というものがどんどんなくなってる。

私が今、首都圏で電車に乗るときは、ほとんどの場合プリペイドカードしか使
わない。
このあいだ飛行機(国内線)の予約をしたけれど、ネットで予約をして、搭乗
当日にそのままカウンターに行くシステム。搭乗券は渡してくれるのかもしれ
ないけれど、航空チケットというやつには、最後まで会わないのだろう。

航空会社に関して言えば、世界の航空会社をとりまとめて事業の簡素化をすす
める組織のようなものがあって、その簡素化の大きな課題の1つにチケットの
ペーパーレス化があるんだそうだ。
(参考:http://www.nittsu-ryoko.com/blog/disp.php?report_id=247"
だからこの流れはどんどん進み、空路以外のところもそうなっていくし、なり
つつある。

引き取りに行く面倒もないし、なくす心配もない。便利なのだけど、どうも「モ
ノ」として形になっていないと安心できない気がする。私はペーパーレス化過
渡期の人間である。

楽しみにしている旅行なら、「何時何分の○○便ね」と矯めつ眇めつ何度もチ
ケットを見たりしたものだけれど、そういう楽しみはこれからどんどんなくなっ
ていく。人間の小さな楽しみとはしぶといもので、そうなったらなったで、きっ
と、予約したときの画面とか、予約確認のメールを、同じように何度も見たり
して、それが習い性となるだろう。ついでに友だちに転送したりして、「今度、
旅行行くのよ」なんて自慢する楽しみが新たにできたりするのかもしれない。

今回の「オリエント急行」というのは、移動よりもそれに乗ることが目的で、
乗車券自体が記念品なのだから、なかなか合理化に浸食されないのかもしれな
いが、なくさずに済んだり本人確認が容易になるなら、ペーパーレス化もあり
得る。
3人の恋人から同じ列車の「切符」がプレゼントされる。絵になる光景なのだ
けれど、そんな状況が、メールで予約番号のお知らせとして届く時代も近い。
映画作家はやりにくいだろうなあ。

---------------

感想・問い合わせはお気軽に

転載には許可が必要です。
リンクは自由です。

編集・発行:あんどうちよ

Copyright(C)2004-2005 Chiyo ANDO

---------------


一覧へ ←前へ →次へ 登録フォーム

HOME