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*** 欧 州 映 画 紀 行 ***
                 No.055
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ 空港の秘密に夢をつめて ++

作品はこちら
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タイトル:「ゲート・トゥ・ヘヴン」
製作:ドイツ/2003年
原題:Gate to Heaven ドイツ語題:Tor zum Himmel

監督・共同脚本:ファイト・ヘルマー(Veit Helmer)
出演:ヴァレラ・ニコライエフ、マースミー・マーヒジャー
   ミキ・マノイロヴィッチ、ウド・キア、ソティギ・クヤテ
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■STORY
ドイツ・フランクフルト空港。
清掃員や機内食を作る人、荷物の上げ下ろしをする人から、不法滞在で空港地
下に隠れ住む人々まで、空港には様々な国籍の様々な事情の人がいる。
そんな人達が繰り広げる、チャーミングで前向きなコメディ。

ロシア人アレクセイは、パイロットを夢見てドイツへやってくるが不法入国で
収監されてしまう。空港職員ダックに金を積み、脱獄して数人の仲間と地下で
暮らすこととなる。
インド人のニーシャは今は清掃係だが、いつか客室乗務員になることを夢見て
いる。
ある日ニーシャを見かけたアレクセイは彼女に一目惚れ。
障壁いっぱいの彼らの恋は……

■COMMENT
何にも考えずに笑って、純な恋人たちに拍手を送れる楽しい作品だ。

不法入国のため空港内で隠れて生活するアレクセイ、暴力をふるう夫から逃げ、
本国に息子を残して、亡命許可を待ちながら働くニーシャ。状況は過酷だけれ
ど、夢は失わず、つねに今より状況をよくすることを考えている。
相手が子持ちだろうと、不法入国者だろうと、自分が好きだと思えば貫き通す。
まっすぐな思いが、あくせくして、小さな不平不満に窮屈になっている身には、
すがすがしい。

経済力のあるライバルも登場するあたり、ラブ・コメディの王道と言ってもい
いだろう。そういえば、パイロットとスチュワーデス(両方とも憧れてている
だけなんだが)の恋というのも現代の古典(?)的ラブストーリーだ。
だけれどそこは複雑な環境にいる二人、どっしり背負った過去や、抜き差しな
らない現状が、子どもっぽい恋愛とは一線を画す。

二人の恋だけではなく、アレクセイの不法入国仲間や、ニーシャの仕事友だち
が、皆、辛い状況を前向きにしぶとく生きている姿も気持ちがいい。でも同時
に不法入国者をかくまうかわりに働かせて上前をはねる、ダックのようなしぶ
とく小ずるいキャラクターがいるのも、妙に人間くさくてストーリーを愛らし
くしている。
どうやらヤギに縁があるらしい不思議なアフリカ人や、手製飛行機で故郷に帰
りたがっているモンゴル人など、脇の人々もいいスパイスだ。

高温多湿が権勢を振るうことこの上なき、ここ日本。暑気払い・湿気払いに
おすすめの1本。

■COLUMN
空港に人が住んでいるとか、空港に足止めを食らうとか、空港を舞台にする映
画は多い。空港、特に大きな国際空港ともなれば、いろんな人が旅立ったり到
着したり通過したり、新しい出会いも人生のリセットも、生まれやすい場所だ
ろう。
そして、空港という巨大なシステムは、何度か利用していても、何がどうなっ
て機能しているのかわからない。だから、そこに何かの秘密が隠れているんじゃ
ないか、と人々は共通の思いを持つ。そんな訳で、見えないところでいろんな
人が暮らしたりうごめいたりしている、という話は、多少荒唐無稽でもリアリ
ティがあるのだろう。

スーツケースを預けたら届かなかった、なんて話もよく聞く“受託手荷物”だ
が、改めて考えると、直行便ならまだしも、乗り継ぎをして複数の路線に乗っ
て、到着地でちゃんと自分の荷物が出てくるってすごいことだと思う。身近に
感じる空港の秘密のひとつ。ドキュメンタリーではないから、実際の空港の仕
事とは離れているだろうが、乗客には見えないところに張り巡らされたベルト
コンベアや、直に接することはない数多くの働く人々、そんな「裏」の世界を
見られるのは楽しい。

旅行客の往来もいくつも居並ぶ飛行機も、旅行の華やいだ気分を思い出させて
くれる。私は特に飛行機好きという訳ではないけれど、ルフトハンザ、キャセ
イ・パシフィック、サウス・アフリカ、エア・ポルトガル、等々、いろいろな
航空会社の機体を目にするだけでもワクワクできた。航空機ファンなら画面の
すみに見える飛行機もどこの航空会社かつい読みとってしまうに違いない。

飛行機に乗ってどこかに飛んで行っちゃいたい。日常にあえぐ私のような人も、
大きな困難から抜け出して生きようとする人も、共通に拳に握る、大空へ託す
夢である。


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編集・発行:あんどうちよ

Copyright(C)2004-2005 Chiyo ANDO

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