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欧 州 映 画 紀 行
                 No.076.02
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

と、いつもは始まるのですが、
ここのところ仕事がたてこんでしまいまして。
年末のお休みもかねて、今週は番外編でお届けします。

どういう風に作品をセレクトしてるの? とたまに訊かれることがあります。
好きな監督のかねてからのお気に入り作品のなかから、「コレ」と1本を選ぶ
こともあれば、たまたまレンタル店で予備知識ないまま手にとって「お、いい
じゃん」てこともあります。
で、そんなセレクト現場(?)をちょっとご覧にいれよう、ということで、
「迷ったけれど結局とりあげなかった作品たち」をお送りしましょう。

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「赤いアモーレ」(Non ti muovere)
2004年イタリア/セルジオ・カステリット監督

私は悪口言うのがあんまり得意ではない。言うと、こてんぱんにやっつけてし
まうから。ほどよく、言われた方も笑えるようなさっぱりした批判をしたいの
だけれど、難しい。んなわけで、自分の好きじゃない作品は取り上げない。こ
れは、好きとは言えないし、でも語りようによってはどうにかなるかも、どう
しようかなと迷った作品。

パッケージから官能ものかと思ったが、官能ものというよりは純愛ものだった。
ものすごく男に都合のいい女がいて、男が身勝手にナルシシズムに浸る。女に
は忠告するうるさい女友達もいない、家族もない、ただただ男を待っている。
男には家庭が。
その都合のよさに驚いたのだけれど、特典メニューなどを見ると、都合のいい
身勝手さは、そういう男を描いたんであって、そこに文句をつけても仕方ない
らしい。なるほど、身勝手な男の悲しい話として考えてみればいいのか、と思っ
たが、それでもやっぱりのれなかった。

印象的な色づかいなど、映像は好きになれたのに、残念。
歯並びをちょっとガタガタにして、化粧を下品にすると、ペネロペ・クルスが
あんなに不細工になるというのは驚き。
  

「父、帰る」(Возвращение)
2003年ロシア/アンドレイ・ズビャギンツェフ監督

私は見栄っ張りである。だから、ちょっと「アート系」な映画を観て「わかん
なかった」とは言いたくない。センス悪そうに見えるのイヤじゃない? だか
らがんばって取り上げてみたかったんだけど。

突然帰ってきた父が、最後まで、なんで、どこから帰ってきたのかわからない、
というストーリーの不透明さだけでなく、父という権力に対する息子の並々な
らない反抗、なぜ、あえて、この不透明な伝え方を作り手が選んだのか、んー、
告白すると、これら全部、わかんなかった。よくわかった点は、子役を含めて
役者の演技がいいな、ということ。
よくわからずに、わかったふりして書くなんて、つまらない。ふだん書いてい
るのだって「わかったつもり」に過ぎないから大差ないのかも知れないけれど。
よくわかんなかったものは、これからも取り上げない、と思う。


  

「ひなぎく」(Sedmikrasky)
1966年チェコスロヴァキア/ヴェラ・ヒティロヴァ監督

わかんなかったと言えば、これもそう。知る人ぞ知る名作キッチュ映画という
ことになっているらしい。「父、帰る」に比べると(比較するのもおかしいん
だけど、上からの流れがあるので)観ているあいだは、楽しめた。だけどもこ
れについて何か書くというほどには、よくわかんなかった。
何しろ見栄っ張りなので、わかんなかった話はもうおしまい。

   Amazonで「ひなぎく」の情報をみる
「イン・ディス・ワールド」(In This World)
2002年イギリス/マイケル・ウィンターボトム監督

「欧州映画紀行」やってるからヨーロッパ映画しか観ないの? と訊かれるこ
とがあるけれど、もちろんそんなことない。アメリカ映画もアジア映画も観る。
欧州の映画を観る数が多いのは確かだけれど、メルマガの「コンセプト」とし
て「欧州映画」を取り上げることにしているだけ。欧州映画至上主義でも(た
ぶん)ない。

この監督はお気に入りの映画作家の1人で、この作品もおすすめ。しかし、こ
れはイギリス映画とは言え、パキスタンの難民キャンプから、ヨーロッパに向
かう少年を追った作品で、舞台の大半はアジアである。<イン・ディス・ワー
ルド>、この世界にはこんな風に生き、暮らす人たちがいると知らしめてくれ
る、胸に迫る物語だが、「欧州映画紀行」のコンセプトとしては、残念ながら
合わない。同じ監督のボスニア内戦をテーマにした「ウェルカム・トウ・サラ
エボ」
の方を取り上げたのだった。

  


「ロング・エンゲージメント」(Un long dimanche de fiancailles)
2004年フランス/ジャン=ピエール・ジュネ監督

これは、取り上げなかったのではなく、取り上げようと思っているうちに時間
が経ってしまい現在に至る作品。

「欧州映画紀行」はヨーロッパの映画を取り上げることをコンセプトとしてい
る、とエラそうに言ったって、悩むときもある。そもそも国籍で映画をジャン
ルわけしたり、そのことをコンセプトとか言うことに、どれだけの意味がある
のかね、と自問する時もあるのだ。
そんなとき、この映画が、出資会社の関係で、フランス人スタッフと俳優の作っ
たフランス語の映画であるにも拘わらず、アメリカ映画と認定されかけた、と
いう話を聞いた。

悩める「欧州映画紀行」筆者としては、ちょっと追求してみたい問題だ。コラ
ム欄でそのことを書いてみようかと、資料を探しているうちに、すっかり何ヶ
月か経ってしまった。アメリカ映画に認定されたときの報道は目にしたけれど、
なぜそれがまた結局フランス映画に落ちついたのか、その経緯を書いたものが
見つからないままになってしまっている。

「アメリ」のジュネ監督とオドレイ・トトゥ主演。ミステリアスな物語展開と、
おとぎ話のような映像世界、そしてトトゥが演じる意志の強い女性の力、魅力
的な作品だから、まだ取り上げてないけれど、ここで強くおすすめしておこう。
  
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いかがでしたか? 番外編。
ぜひ感想などをお寄せください。

リクエストもお待ちしています!

ただ、上に書いたように、悪口の方が多くなってしまいそうなものは取り上げ
ないし、よくわかんなかったものもスルーだし、好きでいいなあ、と思っても、
それについて何か書くとなると難しい場合はあっさり諦めます。
そんなわけで、リクエストもらったら必ず取り上げるとは確約できませんが、
読んでくださってる方々が、どんなものを取り上げてほしいと思っているのか
知りたいと、つねづね思っています。


来週から年末年始のお休みをいただきまして、
次の発行は1月12日を予定しています。

今年1年ご愛読くださり、ありがとうございました。
皆様、よいお年をお迎えください。

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編集・発行:あんどうちよ

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