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欧 州 映 画 紀 行
                 No.076
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ 死んじゃったママには会えないの ++

作品はこちら
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タイトル:「ポネット」
製作:フランス/1996年
原題:Ponette 

監督・脚本:ジャック・ドワイヨン(Jacques Doillon)
出演:ヴィクトワール・ティヴィソル、マリー・トランティニャン、
   デルフィーヌ・シルツ、マチアス・ビューロー・カトン
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■STORY
突然母を亡くした幼い女の子が、その死を受け入れていくまでを描く。

4歳のポネットは、自動車事故で母を失ってしまう。
「ママは死んだ」と聞かされて、それが悲しいことはわかっても、どういうこ
となのかが根本のところでわからないポネット。「夜、ママに会った」とか「マ
マを待ってる」と言い出して、父や預けられた先の伯母を困らせる。

いとこや、寄宿学校の友人の話から、神さまにお願いしたらママに会える、と
信じ込んだポネットは……

■COMMENT
身近な人の死は誰にとっても耐え難い。その事実を受け入れることができない
という事態は大人でもいっしょである。当人の生命活動が停止しても、葬儀が
済んでも、身近な人にとってその人はなかなか「死なない」。
死という状況を把握するまでに時間がかかったり、ちょっとした奇行に走った
り、そんな様子を主題にする映画は多い。

そんな中でもこの作品は、4歳の幼い子供が母の死に遭う、という特別な内容
だ。何が特別って、「死を理解できない」「死を受け入れる途上にある状態」
を表現するのは簡単なことではなく、演技がうまくなければ、映画全体が成り
立たなくなるのだが、それを幼い子役が務めているのだ。

ポネット役の女の子の、自然な表情はすばらしい。
ことさらに悲しみを演じない。気持ちが「ぽつねん」とどこかに取り残されて
しまった孤独な感じ、まわりの大人たちにわかってもらえないストレスが、顔
つきや動作に現れる。空想好きな子供らしい頑固さが、観る者を物語に引き寄
せる。

ポネットは、いとこたちといっしょに寄宿学校に入る。そこには子供だけの社
会が展開されていて、自分の殻にとじこもっているポネットを、周りの子供た
ちが子供なりに受け入れている。
しかし、そこは子供のこと、大人から見たら、親をなくした子供に少し残酷じゃ
ないかな、というようなこともあるし、悪気はなくとも、ママに会えるおまじ
ないを教えてぬか喜びさせちゃあ、だめなんじゃないかと、やきもきするよう
な場面もある。しかし、子供には子供の納得の仕方があるもの。優しく包みあ
げるだけじゃなく、ポネットの「ママに会いたい」願いに、自分の目線でつき
あった周囲の子たちのおかげで、ポネットは「ママが死んじゃったこと」を受
け入れられたのだろう。

■COLUMN
子供たちのアップが多く、着ている服や、小物のかわいさにも目がいく。
私が好きなのは、そんなに高くなくて(たぶん)、扱いが簡単で、毎日着られ
そうなセーター。たっぷりと余裕をもってざっくり編んだもの。おそらく化繊
で、ウールにはない鮮やかな色が出てる。
何でもなさそうなのだけれど、あのきれいな色のセーターって、日本ではあん
まり見かけない。

田舎のすんだ冬の空気の中で映える、真っ赤なマフラーや、ボンボンつきの真っ
青な帽子も素敵だと思う。
主に子供のファッションなのだけれど、どうしてどうして子供の装いとばかに
はできない、特に色づかいは真似したくなる。(まあ、それは私がいまだに子
供みたいな服しか着ていない証拠かも知れないけれど)

ポネットのお気に入りで肌身はなさず持っている人形「ヨヨット」は、もうク
タクタになっている上にかなり不細工なのだけれど、それがまた大事だってこ
とにリアリティを感じる。作り込んだぬいぐるみもいいけれど、クタクタ人形
というのも、なかなか肌になじむものかもしれない。

ポネットのギプスに、パパが「真っ白じゃさみしい」と子犬の絵を描いてくれ
る、というのも気に入った。あんまり子犬に見えないあたりも、よけいいい。
ケガしてギプスをはめている家族や友だちがいたら、「お守りに」と上手くて
も下手でも絵を描いてあげては? おすすめ。

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編集・発行:あんどうちよ

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