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欧 州 映 画 紀 行
                 No.090
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 大泥棒も悩んで大きくなった ★

作品はこちら
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タイトル:『ルパン』
製作:フランス・イタリア・スペイン・イギリス/2004年
原題:Arsène Lupin

監督・共同脚本:ジャン=ポール・サロメ(Jean-Paul Salomé)
出演:ロマン・デュリス、クリスティン・スコット・トーマス、
   パスカル・グレゴリー、エヴァ・グリーン
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■STORY
幼き日のアルセーヌ・ルパン。伯爵である叔父の屋敷で、ボクシング教師の父
に稽古をつけてもらいながら、優しい母とともに暮らしていた。
ある日父の命で伯爵夫人所有の「王妃の首飾り」を盗み出す。受け取った父は
仲間とともに逃走を図るが、惨殺死体となって発見され、アルセーヌ母子は、
伯爵家から追い出されてしまう。

時は過ぎ20歳となったアルセーヌは、ラウール・ダンドレジーと名乗り、金持
ちたちの優雅なパーティーで、華麗に盗みを働く泥棒となっていた。
ひょんなことから王家の財宝のありかを示す十字架探しに参加することとなっ
たルパン。怪しいライバルたちのなかで彼は財宝にたどりつけるのか。

■COMMENT
華麗に盗みをするが、金持ちからしか盗まず殺しはしない怪盗ルパン。モーリ
ス・ルブラン原作のシリーズの『カリオストロ伯爵夫人』をベースに、他の作
品の名場面を織りまぜてオリジナルストーリーを構築した。
現代的な新解釈もつけ加わって原作ファンも楽しめるだろうし、「ルパン」の
何となくのイメージしか持っていない人ももちろん、先の読めないストーリー
に引きつけられるだろう。

豪奢なセット、衣装、カルティエ協賛のジュエリーと、痛快活劇の装置は揃っ
ていて、もちろんそのエンタテイメントは申し分ない。それだけではなくて、
人間ルパンの惑いや苦悩まで描いているから、心理描写を楽しみたい人にもお
すすめ。

「ルパン」の何となくのイメージしか持っていない人(ホームズ派の私がまさ
にそうなのだが)は、華麗にスマートに宝石を盗み出す怪盗を思い描いて、ま
だ20歳の、いまいち成熟しきっていないルパンの姿に少し戸惑うかもしれない。
(一応原作も読んでみたが、「若く経験の浅いルパン」は映画オリジナルでは
なく原作通り)

謎の男ボーマニャンと、不老不死の妖女と噂されるカリオストロ伯爵夫人、十
字架探しで対立する二人のどちらかがどうも父殺しの犯人ではないかと苦悩す
るルパン。でもカリオストロ伯爵夫人の魅力に抗しがたく、恋愛関係から抜け
出せない。泥棒としての腕も伯爵夫人に磨いてもらって成長途上の小僧っ子。
だけどいとこクラリス嬢への思慕も断ち切れない優柔不断男。恋愛映画として
みれば女性はちょっとイライラするかも。演ずるロマン・デュリスのキャラク
ターもはまって、まだまだ発展途上の「ただの人」ルパンの姿は意外に魅力的
だ。

恋愛、冒険、青春、成長、ミステリー、いろいろなものがつまった娯楽作品。
ひたすら痛快に、謎を解いて悪者を追いやってめでたしめでたし、といかない
のは、フランス映画の美学と意地、気に入る人は気に入るはず。

■COLUMN
時代物にもかかわらず、「その地」に行きたいと旅情をかきたてられる作品だ。
19世紀末、20世紀初頭のパリを再現は、ロケと映画用の改装とCGを組みあわせ
て行われていて、半分くらいはホントの映像だし、今飛行機で飛んでいけば、
その姿に出会えるような気すらする。古い建造物を残して街並みを作っている
パリならではのことであり、また、パリ、フランスを旅行するときにはしばし
ば歴史をたどるから、でもある。

「時代物にもかかわらず」と書いたが本当は「時代物だからこそ」なのかもし
れない。
パリに限らず、どこかを観光するのなら、名所・旧跡を見て回ることは多い。
ふだんの生活の中で「歴史」に触れない人なら、少し前の時代の調度品や建造
物は「旅行」で見てまわるもので、旅行の符号と一致するんじゃないだろうか。

だから当時の面影はなーんにもなくても大河ドラマの舞台には旅情をくすぐら
れた観光客がやってくる。
街並みのレベルでも美術館・博物館のレベルでも、往時の面影を残すパリなら
なおさら、コスチュームプレイが旅の誘いにしっかりつながる。

さらに、ラスト近くで見られる『奇巌城』のモデルとなったノルマンディー地
方・エトルタの、針状の岩、断崖は圧巻。本当にこんな風景があるのかいな、
と感心する。(たぶん現地でホントにロケしているんだと思うのだけれど、確
信はなし)

豪奢な建物から荘厳な自然まで、行ってみたいと思わせる風景満載。行ったつ
もりになるのにも、次に行く場所選びにも最適な一作だ。

■INFORMATION
2週間お休みをいただいて、
次回は5月18日に配信いたします。
よろしくお願いします。

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編集・発行:あんどうちよ

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