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欧 州 映 画 紀 行
                 No.096
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 愛する人と人生のパートナーは同じですか? ★

作品はこちら
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タイトル:『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』
製作:スペイン・フランス/1996年
原題:El Amor perjudica seriamente la salud
英語題:Love Can Seriously Damage Your Health

監督・共同脚本:マヌエル・ゴメス・ペレイラ(Manuel Gómez Pereira)
出演:アナ・ベレン、ファンホ・プイグコルベ、
   ペネロペ・クルス、ガビーノ・ディエゴ
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■STORY&COMMENT
30年の月日をまたぐラブ・コメディ。

セレブが大好きなディアナは、スペイン公演中のビートルズが宿泊中のホテル
に潜り込む。ジョン・レノンとそこで劇的な出会いをして結婚してしまおうと
画策したのだ。居合わせたボーイのサンティが止めるのも聞かず、ディアナは
サンティを色仕掛けで操りながら部屋に入り込もうとする。
ジョンとの出会いは果たせなかったが、これがきっかけでサンティがディアナ
に恋をし、運命の出会いは、ディアナとサンティのものとなる。ディアナは貧
乏人に用はないというのに。

「ペネロペ・クルスの」となっているけれど、ペネロペが演ずるのはディアナ
の若き日のみなので、全体の半分くらいしか出ていない。劇場未公開作品とい
うことで、強烈に宣伝臭いタイトルをつけるのはわかるけれど、そういう売り
方をしないと見られない駄作では決してないから、もったいない気もする。

とにかくお金持ちやセレブを求めるディアナは、サンティとの「生活」には興
味ないのだが、愛してしまうのはどうしようもなくて、結婚後も不倫を重ねる。
サンティは気が弱くて平凡で、ディアナを本当に愛しているのだけれど、毎回
ただ振り回されるだけ。

そんな関係がずるずるといつまでも続いて、そのダラダラ具合にも、不倫をす
るための涙ぐましい努力にも、結局いつも見事に振り回されてるサンティにも、
けっしてちっとも反省しないディアナにも、終始笑いっぱなしの楽しい映画だ。
ディアナは最後までしたたかにお金を求め続けて、やっぱり愛がいちばん、な
どと美しき結末には落とさない一貫ぶりも潔い。

それにしても、「愛する人」と「人生のパートナー」が一致しないって人は、
現実世界にもたくさんいるのではないだろうか。一致させたいのにどうしても
一致しなくて嘆く人もいれば、それは一致しないものだと割り切って世間を渡っ
ていく人もいる。
二人の騒ぎように笑いながらも、どこか哀愁を感じずにいられない作品だ。

■COLUMN
DVDのジャケットにはビートルズとペネロペが大きくデザインされているため、
アマゾンのレビューなどを見ると、ビートルズが関係する映画かと思って観て
がっかりした人もいるらしい。
だがもちろん、ビートルズという「アイテム」を使ったのは、本来は宣伝目的
ではない。「時代」を明確に描くのに役立っていると、私は思う。

ビートルズのスペイン公演で大騒ぎになったのはいつか、スペイン人ならピン
と来るだろう(65年らしい。日本に来たのは66年)。その後、スペイン国王に
待望の男児誕生、ジョン・レノン射殺事件など、有名エピソードに、日付、月
日の流れを語らせて物語は進む。ところどころにはさまれるニュース映像など
は、スペイン人なら敏感に反応るすのかもしれないけれど、スペイン現代史を
よく知らない私にはわからないな、というものもあって少し残念なところも。

この作品の「現在」つまり95年か96年頃から、さらに今は10年経ってしまった
けれど、おそらく90年代中頃は60年代に青春を過ごした人たちの中に「ああ、
あれから30年……」てな雰囲気が満ちたんだろうな、と想像する。

そんなことも含めて、60年代から90年代のスペインの社会や世相の流れをのぞ
くのも面白い。外国の物語を観る醍醐味はこんなところにもある。

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編集・発行:あんどうちよ

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