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欧 州 映 画 紀 行
                 No.099
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ コドモとオトナの境界はイズコに? ★
作品はこちら
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タイトル:『サッカー小僧』
製作:スウェーデン/1974年
原題:Fimpen 英語題:The Butt

監督・脚本:ボー・ウィデルベルイ(Bo Widerberg)
出演:ヨハン・ベルイマン、モニカ・ゼッテルンド、インゲル・ベルイマン、
   スウェーデン代表監督、選手たち
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■STORY&COMMENT
6歳の子どもが代表選手に大抜擢されるサッカーコメディ。

今回は、やれやれやっとサッカーのバカ騒ぎが終わってくれたよ、というあな
たと、んー、すっかりサッカー中毒でここ数日何か物足りないよ、というあな
たのためのサッカー映画案内である。

公園で近所の仲間とサッカーに興じていたヨハンは、ある日プロの目にとまり、
地元のクラブチームでプレイすることになる。抜群のフェイント能力とドリブ
ルセンスで、初試合で大活躍。代表にも招集され「フィンペン」(ちびっ子)
の愛称ですっかりスター選手に。チームはヨハン中心に戦術を組み立て、ワー
ルドカップへの出場もヨハンの力にかかってくる。

代表監督が「日曜の試合に出てくれるかなあ」と直接電話をかけて代表選出が
決まるなど、とぼけた設定が案外すんなりくる。「6歳がプロで代表でプレイ
なんて!」という「ノーマル」な反応はあえて封じ、ストーリーが自然に運ん
でいるように思う。
監督をはじめ、本物の選手も多く出演しているため、サッカーシーンにはかな
りのリアリティがある。スウェーデンのサッカー関係者はお茶目だ。

ただ、もちろん「サッカー」は重要なファクターだけれど、この映画の骨子は
「コドモの世界とオトナの世界」のギャップ、(小さな)あつれきなのだ。
サッカーはできても靴のひもはまだ結べないヨハン、チームメイトが結んでや
らなくちゃならない。合宿・遠征でのヨハンへの絵本の読み聞かせは、メンバー
から不満の声が。6歳でまだ勉強をはじめていないから、サインをねだられて
も字が書けない。
そして仲間だった「コドモの世界」に帰っても「そいつは上手すぎるんだ」と
サッカーに入れてもらえなくなってしまう。

いつでも往き来ができるように感ずる「オトナ」と「コドモ」の世界はけっこ
う深い溝があるもんだ、と思う。
これが12歳の少年だと、オトナの世界に片足をつっこんでいるから、そんな
ギャップは生まれない。6歳だからこそ生まれるおかしさなのだ。

そんな境界を乗り越えてしまったヨハンの決断は……、6歳の人生の選択はな
かなかカッコイイ。

■COLUMN
ワールドカップのおかげで、薄型テレビの売上が伸びたとか、日本が負けてか
らはほとんど売れなかったとか、実際の数字はよく知らないが、とにかく、ワー
ルドカップといえば、テレビなどのAV機器の売上を何らかの形で気にするのが
常識らしい。
ワールドカップだからって新しいテレビで見たいって皆が思うってのもよくわ
からないなー、と今のところ4:3の厚型テレビで十分な私は思う。

そんなことを言いつつも、電気店でいくつもの薄型モニターから繰り返し流さ
れる試合の映像を見ると「あー、きれいだなあ、いいなあ」と心動かされる。

青々と刈り揃えられた緑の芝生に、赤や青や黄のカラフルなユニフォームが舞
う。応援する人々も、ペインティングやレプリカシャツ、タオルマフラーと、
色彩豊かだ。そう、映像としてとてもきれいなんだな。鮮やかで生命力にあふ
れている。試合の内容は置いとても、画だけでなんだか元気が出る。テレビを
売るなら絶好の映像が毎日流されるということなんだろう。

スーパースローやズーム、映像技術も進歩し、試合を番組として売る商魂も発
達し、今後も映像として美しいサッカーは創ら続けるだろう。

そんな現代から、この1974年西ドイツ大会を目指すチームの試合を見ると、パ
タパタ動く得点掲示板も、少々はげかけてくすんだ芝も、いすが置いてあるだ
けのベンチも、ああ、どこか牧歌的。
サッカーと言えば鮮烈なカラーの刺激に慣れてしまった私だが、たまにはこん
な雰囲気でサッカーを楽しむのも<通>な感じ!?
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編集・発行:あんどうちよ

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