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欧 州 映 画 紀 行
                 No.115    06.12.07配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ なぜかは知らねどどこかチャーミングで憎めない ★

作品はこちら
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タイトル:『ベルエポック』
製作:スペイン・ポルトガル・フランス/1992年
原題:Belle Epoque 英語題:The Age of Beauty

監督:フェルナンド・トルエバ (Fernando Trueba)
出演:ホルヘ・サンス、ミリアム・ディアス=アロカ、アリアドナ・ヒル 、
   マリベル・ヴェルドゥ、ペネロペ・クルス、
   フェルナンド・フェルナン・ゴメス
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■STORY&COMMENT
1931年、スペインでは左派が勝利し、王政から共和制に変わろうとしていた。
ある小さな村に脱走兵フェルナンドが迷い込んだ。彼を気に入った老人マノロ
が家にしばらく置いてくれることとなる。フェルナンドが去ろうとしていた矢
先、マノロの娘たちがマドリードから帰省する。あまりの美しさに屋敷にとど
まったフェルナンドと、美しい四姉妹とのラブコメディ。

んー、取り上げるか否か、迷った作品。一体どこまで本気で作った物語なのや
ら、姉妹がかわるがわるフェルナンドを誘惑して、当のフェルナンド君は、い
ちいちそれに乗ってしまうやたら軽いノリの作品だ。地元の青年にはない、よ
そ者ならではの魅力はあるのかもしれないが、それでもやはりフェルナンドの
どこがそんなにモテるのかよくわからないし、誘惑されるとすぐにその気にな
る純朴(?)なところには、おい、そんなに見境なしに、それでいいのかフェ
ルナンド!と突っ込みたくもなる。

それでも、ベタとはわかっていながら、思わず笑わされる場面もあったし、全
体的になんだかチャーミングな映画だな、という印象を受けた。姉妹が仲良く
皆フェルナンドを気に入るのも、なぜかはよくわからないし(物語が進むと、
どうやらこの家族、全員1本ネジが抜けたとこがあるらしいことがわかってく
るが)、フェルナンドが一体本当に誰かを愛しているのかもわからない。でも、
まあ、いっか。と許せてしまう憎めない<かわいらしさ>が作品にある。

この作品は、パソコンに向かって仕事をしながら、休憩するためにちょっとず
つDVDプレイヤーを起ち上げて、連続ドラマのように観た。作品の鑑賞法とし
て失礼かもしれないけれど、今週はどうにもやることがつまっちゃってて、仕
方がなかったんだなあ。スペインの田舎の景色が何ともきれいで、出てくる人
はお気楽で、仕事の合間にはずいぶんいい気晴らしになった。

疲れてて、余計なことを考えたくない時にぴったりの作品だと思う。

■COLUMN
恋愛の絡んだドタバタは、時代を選ぶものではないし、全体のストーリーに、
1931年という時代設定はそんなに関係がない。ただ、前回取り上げた『この素
晴らしき世界』
のように、未来人である私たちは、物語が終わった後、この地
に何が起こるかを知っている。

スペイン革命だ、この後は共和制だ、と活気にあふれていた人々が、5年も経
つと、内戦に翻弄されることは世界に知られた「歴史」である。内戦突入後、
田舎でそっと暮らす父とマドリードにいる娘は別れ別れにならなかったか、見
晴らしがいい、いかにも風が気持ちよさそうな景色はそのまま残ったのか、ピ
クニックをした森や、散歩をした川べりは、木漏れ日をそのままの姿にあそこ
に残したのか。

物語となった時代は、それはそれで社会変動の時機、大変な時代だった。それ
でも皆笑い合いながらバカな恋遊びにも興じ、人生を楽しんでいた。もっと大
きな嵐の来る前の、最後のよき時代、それがタイトル<ベルエポック>の意味
なのだろうか。ラストシーンを見送った後、70年あまり後を生きる私は思った。

■INFORMATION
都合により来週12月14日はお休みします。
再来週またお会いしましょう。

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編集・発行:あんどうちよ

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