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欧 州 映 画 紀 行
                 No.116   06.12.21配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 時代を超え、空間を超え。無数に築くつながりは無数に ★

作品はこちら
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タイトル:『秘密は誰かに話すもの』
(公開時タイトル『ブラウン夫人のひめごと』)
製作:フランス/2002年
原題:24 heures de la vie d'une femme
英語題:24 Hours in the Life of a Woman

監督・共同脚本: ローラン・ブニーク(Laurent Bouhnik)
出演:アニエス・ジャウィ、ミシェル・セロー 、ベレニス・ベジョ、
   ニコライ・コスター=ワルドー 、クレマン・ヴァン・デン・ベルグ
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■STORY&COMMENT
南仏のリゾート地。老人ルイは、カジノで恋人とケンカして逃げ出した若い女
性オリビアと出会う。
ルイは少年時代のある思い出のためにここに戻ってきた。ルイは19歳の彼女に
何とはなしに、この話を語り出す。それは65年前の彼の家族に起こった事件、
そして、その頃出会った未亡人から聞いた愛の物語。
同じ場所で起きた3つの時代のエピソードが紡がれる。

基軸となるのは、未亡人ブラウン夫人とポーランド人将校の24時間の不思議な
恋の物語。1913年に設定されたこのエピソードを、1936年に少年だったルイが
聞いて感銘を覚え、そのことをさらに現代、偶然出会った少女に話すという、
二重の枠構造になっている。

言葉で説明しているとひどくややこしいが、映像で見ると、どの時代のことも
実にスムーズに伝わってくる。
ブラウン夫人の物語は、それ単体でも興味をそそられる話だが、間あいだに、
別の時代の様子が差し込まれ、それを聞く人間が映し出される方がかえってス
リリングで、心につきささる。

カジノでの客の手のアップ、疾走する馬のアップ、強すぎるとも思えるリゾー
ト地の日差し、どこか意味深で、でも何とははっきり判じ得ない映像が心地よ
い。心を揺さぶられるような、映像の方がこちらの童謡を見透かしているよう
な。愛の物語も、それを映し出した画も、奇妙に心を揺らす作品だ。

■COLUMN
誰かに聞いた話をまた誰かに語って聞かせ、聞いた者に何らかの変化をもたら
すという構造は、人が他人の話に共感し、時に大きな影響を受ける、というこ
とのメタファーでもあるように思う。直接関わっている人に影響を受けること
は誰も否定しない。だが、大昔の、無名の見ず知らずで血縁もない女性の話に
影響を受けるなんて、ふつうは想像しないものだ。

3つの時代のいずれも、1人の女性の24時間が描かれる。1913年のブラウン夫
人と、1936年のルイの母と、そして現代2001年のオリビアだ。
オリビアは、ルイから今まで誰にも語らなかった秘密の話を聞いて、行き詰まっ
ていた自分の人生を見直すことになる。時代を超えて、直接の関わりの有無を
超えて、人は他人の人生に影響を与え合う。

でも、考えてみれば、映画や本というのは、だいたいそういうものだ。時代を
超え、空間を超え、真実か否かを超え、有名無名にかかわらず、登場人物は観
る者や読む者の心に入り込み、影響を与える。登場人物と受け手の関係ができ
れば、その創作者と受け手の関係ができたも同じこと。そうやって、意識して
もしなくても、人は無数に関係を築く。

様々なものを介して、人はつながりあっているんだな、なんてことを考えさせ
られた作品でもあった。

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編集・発行:あんどうちよ

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