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欧 州 映 画 紀 行
                 No.127   07.04.26配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 放言も放埒も、何とかなるさ ★

作品はこちら
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タイトル:『17歳』
製作:スペイン/1996年
原題:Brujas 英語題:不明

監督・脚本:アルファロ・フェルナンデス・アルメロ(Álvaro Fernández Armero)
出演:ペネロペ・クルス、アナ・アルバレス 、ベアトレス・カバジャル
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■STORY&COMMENT
恋人を追って家出中のバックバッカー少女と、家賃滞納で追い出されそうな化
粧品の訪問販売員、長年の結婚生活に見切りをつけて家を出てきた中年主婦。
世代も境遇もバラバラの3人が、出会って過ごすある1日、生まれる友情はい
かに……。

近所のTSUTAYAで、『17歳の処方箋』(確かエリート家庭の青年が自我に目覚
めるような青春ドラマだった)、『17歳のカルテ』(確か心が不安定な少女が
精神療養施設に送られて巻き起こるドラマだった)に並んで置かれていて、手
に取った作品だ。
17歳と言えば大人と子どもの境目、イコール「青春」という年齢、この作品も、
青春の痛くて甘酸っぱいドラマなのかな、と想像しながら観てみた。

しかし、おそらくペネロペ・クルスがハリウッドでブレイクした後、若い頃の
未公開作品を買いつけてきてリリースしたソフトだろう。このタイトルは「ペ
ネロペの若き日の姿」を宣伝するものでしかない。『処方箋』にしろ『カルテ』
にしろ、原題には「17歳」という年齢は含まれていなくて、「17歳」に何か特
別なものを感じてしまう日本人向けのタイトルなのだろう。しかし、最近、思
春期の危うい年齢といえば「14歳」にイメージが変わりつつあるようにも思う。
今後は14歳を冠する邦題も増えるのか?

おっと話がそれた。
この作品の原題は、スペイン語で「魔女たち」という意味。そう、その方がずっ
としっくりくる。3人の女たちは、出会って意気投合というのでもない。何と
なく一緒にいて何かといえば気が合わなかったりして口論になる。それぞれが
暮らしに不満を抱いていて、その不満やイライラを他の2人にぶつけては、相
手を罵倒したり、罵倒された方は黙ってないで言い返す。言いたい放題、時に
はあけすけな性生活の告白をしてみたり。なんだか人間の(女の?)見ちゃい
けない部分を見た気がして、日常に潜む魔女性をつきつけられたようだ。

3人の偶然の出会いが、何か徹底的な変化をもたらす訳じゃない。でも、みん
なそれぞれの辛さを抱えながら、まあ明日も何とか、生きていくんだね、とちょっ
とした力が湧いてくる。
つまらない日常を、そのままに生きることは十分勇気のいることで、その勇気
を「魔女たち」は、控えめに届けてくれるのだ。

■COLUMN
ふだんの私の好みからいくと、ちょっと大味かな、という気がしないでもない、
この作品。3人の会話は、それぞれのキャラクターをよく表しているけれど、
繊細さはいまいちだし、出会った者同士、大きな変化はなくともしみじみとく
る「影響し合い」があるという訳でもない。

それが意外に面白く観られたのは、全体を貫き通す素直さのせいだろう。
隠し事もするし、ちょっとした泥棒もするし、互いに信頼し合うというのとは、
ほど遠いのだけれど、相手に遠慮なく、好きなことをぶつけ放題。これが私に
はすごく素直で率直な印象だった。

最近、私は、人間関係でちょっとした悪循環に陥っていて、こんなこと言った
ら傷つくかなあ、と言いたいことを言えなかったり、結局その言いたいことを
言えないで、本心を隠して親切な人ぶっているかのような自分に嫌気がさした
り、でもやっぱりなかなか本当に思っていることは言えなかったり、まあうだ
うだぐだぐだ、している。

そんなこんなで生活全体にぐだぐだ気分が入り込んでいる今、相手がどう思う
かなんて考える前に言葉が出て、それにムカつけば素直に反撃する、そのやり
とりがスカッとさせてくれた。

悪い循環にずっぽりはまらないで、とりあえず言いたいことは言えば、それで
後は何とかなるのかな、とぐだぐだを断ち切るきっかけをくれたような気がす
る。それで実際に行動するかは、また別の話だけれども。


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編集・発行:あんどうちよ

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