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欧 州 映 画 紀 行
                 No.138   07.07.19配信
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パソコンが故障したため、先週号はお休みしました。ごめんなさい。

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ くすぶりを抱えた大人たち ★

作品はこちら
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タイトル:『家の鍵』
製作:イタリア・フランス・ドイツ/2004年
原題:Le chiavi di casa 英語題:The Keys to the House

監督・共同脚本:ジャンニ・アメリオ(Gianni Amelio)
出演:キム・ロッシ・スチュアート、アンドレア・ロッシ、
   シャーロット・ランプリング
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■STORY&COMMENT
障害を持って生まれてきた子供を手放し、養育を親戚に任せっきりだった父・
ジャンニは、15年経ってはじめて息子のパオロに出会った。「本当の父に会え
ば奇跡が起こるかもしれない」という医師の忠告から、ベルリンのリハビリ病
院まで付き添うことになったのだ。
実の親子とはいえ初対面の二人の旅がはじまる。

ハンディキャップのある人が登場すると、障害者映画かな、と先入観を抱くけ
れど、この映画はそうでもない。もちろんその側面も少なからずあるけれど、
あえて「テーマ」をいうなら、より普遍的な親子の関係だろう。
はじめ全くうち解けなくて、やがて親子らしい情愛が生まれる、という話だと
わかりやすいものだ。でもこの映画はそんなに簡単ではなく、別の言い方をす
ればそんなに「安く」ない。

傍目から見て、ジャンニは初対面にしては、よく面倒を見ていると思う。慣れ
なくてうまくいかないところも、ぎこちなさもあるけれど、知らずに見たら優
しい父だろう。

でも、そうして面倒を見ながらも、ジャンニの中にはどこか硬直した思いがあ
り、ずっとそれがどこかでくすぶっている。
大人(親)のなかにあるこの「くすぶり」が私にはこの映画の「肝」と見える。

ジャンニは病院で、もっと重症の娘を持つ母・ニコール(シャーロット・ラン
プリングが演ずるやたらに存在感のあるキャラクターだ)と出会う。彼女との
おしゃべりが。ジャンニの「くすぶり」に変化をもたらしてゆく。
しかしこの、にこやかで穏やかで、障害を持つ子供と忍耐強く接している、誰
が見ても素晴らしい母である彼女の中にも、ある種の「くすぶり」が確実にあ
る。その「くすぶり」に共鳴したからこそ、ジャンニの内面にも変化が起こる
のだ。

病院の中、ホテルの中、室内のシーンは空気が淀んで見える。ベルリンの街を
散歩したり、病院の中でもカフェテラスにいたり、屋外に行くと、そこで吹い
ている風をそのままに感じるように、開放的な気分が観客にも届く。

外の風を受けるごとに、親子はより自然に親密になり、ジャンニの心の「くす
ぶり」も、少しずつ昇華を見せる。
ラストは、その後の展開に想像の余地を残しているけれど、ともかく、観客は
微笑んで涙ぐめる、いいシーンだ。

■COLUMN
ジャンニが、パオロの養父から彼を託されたのがミュンヘン。そして寝台列車
で二人はベルリンへ向かう。
ミュンヘンからベルリン、ベルリンでは街並みもしっかり画面から楽しむこと
ができて、終盤、ノルウェーにも行って、けっこうなヨーロッパ縦断をする旅
映画でもある。北へ北へと行くごとに、ジャンニとパウロが親密になっていく
ところは、ロードムービーの雰囲気もあると言えるだろう。

ところで、皆イタリア人でイタリアで暮らしているらしいんだけれど、どうし
てそういうミュンヘン〜ベルリンなのか、細かい事情がわからない。字幕に反
映されていなかっただけで、言葉の端々から、事情を察することができるよう
になっていたのかもしれないし、最初からそれは漠たるものに設定されている
のかもしれない。(出発地がミュンヘンというのは作品のホームページで調べ
た)

ベルリンの病院は、おそらく、有名ないい病院がそこにあるということなんだ
ろう。じゃ、なぜ出発地はミュンヘン? ジャンニはミラノに住んでいると言っ
ている。パオロはイタリアの比較的南の方に住んでいて(彼が繰り返ししゃべっ
ていた電話番号などから判断)、両者がベルリンへ行きやすい、ミュンヘンの
駅で待ち合わせた、というところだろうか。
想像の域を出ないので、きちんとわかってる人がいたらぜひ教えてください。

ノルウェーへの途上、二人は船に乗っている。海風が涼しく、景色は美しく、
開放感あふれる素敵なシーンだけれど、ドイツの北の方から、ノルウェーへ船
旅? 恐ろしく時間がかかるんじゃあないかなあ。それともまずデンマークに
移動して? 
どっちでもいいことなんだけど、妙に気になってしまって、調べていたらJTB
のサイトにこんなのがあった。
http://blog.jtb.co.jp/modelplan/location/archive/2006/02/17/280.aspx
映画のロケ地紹介なんだけれど、私が見た以上の情報がない。せっかく旅行代
理店なんだから、移動ルートもマニアックに推理してくれたらいいのになあ。

景色がたくさん出てくる映画は、どうやって移動したんだろうとか、正確には
ここはどこなんだろう、とか、好奇心が刺激される。しつこく調べていくと、
行った気分になれるくらいの情報は集まるから、これもまた楽しい。

■INFORMATION
前回もお伝えしましたが、
『欧州映画紀行』が、携帯サイトのコンテンツになりました!

7月3日にオープンした携帯専用サイト「Women's Alacarte」は、
趣味や健康、雑学など、女性が気に入りそうなコラムを集めた
カルチャー空間です。

このサイトで『欧州映画紀行』の姉妹編『欧州映画の冒険』を執筆しています。
ホームグラウンド『欧州映画紀行』から、ちょっと外に出て冒険してきまーす、
の意味をこめてタイトルをつけてみました。

内容は、今まで書いたものの「再編集」が基本ですが、
せっかくなので新しい視点もつけ加えて、メルマガの読者の皆さんにも、
楽しんでいただける内容にしようと思っています。

他のコラムも充実しています。ぜひアクセスしてみてください!

http://w-alacarte.jp/

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