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欧 州 映 画 紀 行
                 No.140   07.08.02配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 私に続く過ぎた日々 ★

作品はこちら
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タイトル:『灯台守の恋』
製作:フランス/2004年
原題:L'équipier 英語題:The Light

監督・共同脚本:フィリップ・リオレ(Philippe Lioret)
出演:サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、
   グレゴリ・デランジェール
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■STORY&COMMENT
ブルターニュ地方の小さな島に残る、両親の家を売るためにやってきたカミー
ユ。母宛に届けられた1冊の本を見つける。1963年の、その家が舞台の話らし
い。本を読むうちに、彼女は父と母の若き日の秘密を知ることとなる。
……カミーユの父、イヴォンは灯台守。妻(つまりカミーユの母)マベの父で
ある先代が亡くなった後に、後任として派遣されてきたのは素人のアントワー
ヌだった。初心者の上によそ者、周りの反発は激しい。

舞台の大半は1963年だが、娘が父母の若き日の物語を読む、という枠構造にさ
れているところが、まだるっこしいようだけど、けっこう大きなポイントだと
思う。
外からやってきたアントワーヌが、イヴォン一家と少しずつ親しくなり、マベ
に恋するストーリーは、切ない三角関係。それ自体として素敵な話なのだけれ
ど、急速な「つかの間」感、「唐突」感も否めない。もしもこの話だけで完結
していたら、しっくり来なかったように思う。
それが、娘が40年後にその話を知るということがつけ加わって、大きな時間の
流れの中に、たゆたう「つかの間」をイメージできる。そのつかの間が現在と
つながっていることが印象づけられるのだ。そして、愛の話は、本に収められ
ていることで、物語性が強くなる。
秘密の愛を直接ぶつけられるよりも、味わいが増し、その時に入り込むことが
できる。まあ、私はそんな風に、この時代と物語に入り込めた。

愛や恋だけでなく、「灯台守」が現役で生きていた頃を描いているところも魅
力。おそらくこれも「回想の枠」に入れたれたことで、よりヴィヴィッドに観
られるのではないかな。

「灯台守」。なーんだかロマンたっぷりにカッコよさげだけれど、何してるの
か、具体的に何をしているのやら、知らない人がほとんどだろう。もちろん私
も考えてみたことがない。1960年代なんて、それほど昔ではないような気がす
るのだが、今ではすべてオートメーション化され、灯台守という仕事はなくなっ
てしまった。
灯台から海を見張るとき、荷物を詰めて陸から海の仕事場へ向かうとき、仲間
と交代するとき、その様子を誠実に写し出しているところも興味深い。ロマン
たっぷりというより、つつましく、過酷だ。
実際にブルターニュ地方の「ジュマンの灯台」を舞台に撮影、風景も含めて
「灯台」という未知の世界を楽しめる。終盤、荒波の嵐のシーンは、アクション
映画みたいに迫力満点だ。

マベ、イヴォン、アントワーヌ、それぞれ演ずる役者が、すべてイメージにぴっ
たりだ。特にイヴォン役のフィリップ・トレトンは、仕事に誠実で、友を大事
にし、妻を愛し、けれど精神的に不器用な海の男が、びっくりするほどはまっ
ている。

■COLUMN
フィリップ・リオレ監督は、同じくサンドリーヌ・ボネールを主役に使った
2001年の『マドモワゼル』で、「灯台守の恋」の話を登場させている。
ただ、『マドモワゼル』で出てきた灯台守の話と、今回の『灯台守の恋』と、
同じ話なのか全然違うのか、私もうろ覚えで判断つかなかった。検索してみた
ら、自分のレビューが出てきて脱力。
http://oushueiga.net/back/film005.html

どうしても気になるから、しょうがない、DVD借りてこよっか、と思っていた
ら、なんと都合のいいことに、CSで今日の早朝に放送してくれていた。グッド・
タイミング!

『マドモワゼル』で、劇作家を目指すピエールが執筆中だという「アルメンの
灯台」では、灯台守が仲間の妻に恋をする、という設定は同じ。ただし、仲間
が繰り返し語る妻の話を聞いて、顔も知らずに恋をする、という話だった。夢
があって想像をかき立てられる。それもなかなかの設定だ。さらに、ボネール
演ずるクレールが、その灯台守が自分の親だというロマンをつけ加えるところ
も、今作への、(もしくは、からの)目くばせのよう。
『マドモワゼル』を撮影中、すでにこの『灯台守の恋』の構想はあったという
から、その頃には、「顔も知らぬままに同僚の妻に恋する」という話で進んで
いたのかも知れない。

そんな訳で『マドモワゼル』も併せて観ると、また違った感想も持てそう。時
間があれば、両方観るのがおすすめ。
リオレ監督、「灯台」を気に入っているようだから、また違ったヴァージョン
の灯台物語を作ってくれるのも、いいよなあ。

■INFORMATION
★夏休みのお知らせ
来週、再来週は、夏休みとして、発行をお休みいたします。
次回配信は、8月23日の予定です。ご了承ください。

夏休み中も、下記ケータイサイトは、更新されますので、ぜひご覧ください!

★携帯専用サイト「Women's Alacarte」
7月からはじまったケータイサイト「Women's Alacarte」に、
欧州映画のコラムを載せています。
内容は、メルマガで書いたものの「再編集」が基本ですが、
せっかくなので新しい視点もつけ加えた「再編集」を心がけています。

URLはコチラ↓
http://w-alacarte.jp/

なお、パソコンからでは見られませんので、
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編集・発行:あんどうちよ

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