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欧 州 映 画 紀 行
                 No.145   07.09.20配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ ミステリアスに歴史絵巻 ★

作品はこちら
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タイトル:『裸のマハ』
製作:スペイン・フランス/1999年
原題:Volavérunt(英語題も同じ)

監督・共同脚本:ビガス・ルナ(Bigas Luna)
出演:アイタナ・サンチェス=ギヨン、ペネロペ・クルス、
   ホルヘ・ペルゴリア、ジョルディ・モリャ、
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■STORY&COMMENT
1802年。スペイン。宰相マヌエル・ド・ゴドイは、王妃の寵愛を受けて権勢を
誇り、フランシスコ・ゴヤは宮廷画家として名声を博していた。美人と評判の
アルバ公爵夫人は、この二人の愛人として世間の注目を集めていた。
アルバ公爵夫人(カイエターナ)の突然の死と、ゴヤの有名な絵画『裸のマハ』
のモデルが誰であるか、を巡る歴史ミステリー。

はじめて女性の陰毛を絵画に描き、告訴されたという『裸のマハ』。現在でも
モデルがはっきりせず、アルバ公爵夫人説と、ゴドイの愛人ペピータ説がある
らしい。
その「名画の謎」とアルバ公爵夫人(ゴヤによる肖像画で有名)が40歳の若さ
で死んだのは、何故? という歴史上の有名な謎を組み合わせた物語。スペイ
ンではポピュラーな「謎」なんだろう、と想像する。日本で言うと、「龍馬を
殺したのは誰?」みたいな。ある程度のつじつまを合わせながら、作家が自由
に自分なりの説を披露・解釈して物語を作れるような、有名なネタなのだろう。
違うかな。

絵画の謎解きと言うと、アカデミックな雰囲気を想像するかも知れないけれど、
どちらかといえば、宮廷政治と恋愛の愛憎劇を描いたエンタテインメント。
でも、どの色の絵の具が「毒」になるか、なんていうトリビア的な話題も盛り
込みながら、ちょっと知的な雰囲気も仕込んで、誰でも楽しめるミステリーに
できあがっている。

果たしてアルバ公爵夫人は、単なる病死か、自殺か、殺されたのか。殺された
のなら、誰に? 原因は政治か嫉妬か。次々とたたみかかる謎は、テンポよく
観客をひきつける。
ただし、時間が行ったり来たりする構成は、人の顔をしっかり覚えておかない
と、迷子にされてしまうから、前半部はちょっと集中が必要かも知れない。

華やかな衣装や宮殿のセットが、時空の旅を楽しませてくれる。コスチューム
プレイが好きな人には、特におすすめの作品。

■COLUMN
これはまーったくの勘なので、話半分、どころか2割くらいで聞いてもらいた
いことなのだけれど。

知的な絵画ネタよりも、エンタテインメントに徹してる、というようなことを
上で書いたけれど、脚本も書いて、監督もしているビガス・ルナは、絵画の謎
をもうちょっと前面に押し出したかったんじゃないかと思う。原作の小説があ
るようだから、監督がそうそう自由に発想した物語でもないだろうけれど、も
うちょっと芸術よりに仕立てたかったんじゃないかなあ、と。

原題“Volavérunt”は、ゴヤの版画の1タイトル。女性が飛んでいるのだけれ
ど、身体を支えているのは不思議な餓鬼のような者たち。ちょっと不気味な版
画だ。
映画の中では、アルバ公爵夫人が、何度もこの言葉(ラテン語で飛ぶ?らしい
けど)をつぶやくシーンがあって、最終的にわかりやすくまとめたミステリー
のなかで、この言葉の由来とか、思い出の部分だけが、やけに異彩を放ってわ
かりにくい。

スペインの習俗や歴史、ラテン語やキリスト教などの知識がなくて、私がわか
らなかっただけなのかもしれない。
でも、“Volavérunt”に関することの、作品中での浮いた感じは、ゴヤが後に、
暗く陰惨な「黒い絵」のシリーズを描き残すに至った「謎」をもう少し追求し
たかったけれど、受け入れられやすいエンタテインメントにしました、という
メッセージのように思われる。

“Volavérunt”の意味(と版画作品)以外のところは、何も調べ物をしていな
いし、もう、本当に思いつきと勘で根拠も希薄。でも、こんな風に自由に想像
を膨らませて書きつけるのも、ある程度は許されるでしょう!

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編集・発行:あんどうちよ

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