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欧 州 映 画 紀 行
                 No.163   08.02.14配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 興味ひかれるところがいっぱいで。でも、惜しいんだよ〜。 ★

作品はこちら
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タイトル:『そして、デブノーの森へ』
製作:フランス・イタリア・スイス/2004年
原題:(伊)Sotto falso nome (仏)Le prix du désir
英語題:Under a False Name

監督・共同脚本:ロベルト・アンド(Roberto Andò)
出演:アナ・ムグラリス、ダニエル・オートゥイユ、グレタ・スカッキ、
   ミシェル・ロンズデール
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■STORY&COMMENT
ダニエルは、セルジュ・ノヴァクの名で書く小説家。セルジュ・ノヴァクは、
経歴や素性、顔写真も公開されない謎の覆面ベストセラー作家として通ってい
る。
南イタリア、カプリ島で、義理の息子の結婚式に向かったダニエルは、途中の
船上で、美女ミラに出会い惹かれ、夜をともに過ごした。翌日、式場に着くと、
花嫁はそのミラだった。
ミラとの情事にどんどん溺れていくダニエル、溺れるごとに深まるミラの素性、
ダニエルの正体を暴こうとする気配も次々に現れて……。

サスペンスタッチで進む物語は、先が気になって目が離せない。のは確かだけ
れど、がっかりした部分や物足りないところもあったのも事実。こんなところ
はいいけど、こういうところは、うーん、残念。今回はそんな話になりそう。

そもそも私は、「謎の作家」という設定にひかれてこの作品を観た。作家って、
積極的に社会で発言する人もいれば、そうじゃない人もいて、極端な場合は、
経歴や素性を一切明かさないこともある。
素性を明かさない事情には、人嫌いだとかマスコミ嫌いだとか、思想、出自、
経歴などの、実人生を考慮に入れないで作品を純粋に読んでほしいという願い
があったり、いろいろだ。
そういう、作家の事情や主義や流儀って興味深い。映画の中でも、ノヴァクファ
ンが集まって、匿名の意味をワイワイと考えたりしてる場面があるけれど、文
芸ファンが好むテーマだと思う。

「作家とは人の人生を盗むもの」なんて意味深なセリフもあり、サスペンスの
中から「作家とは?」「作品とは?」なんて考えさせてくれると、とっても楽
しい、んだけども、そういう知的アイテムを振りまきながら、深いところに行
くかと思うと、ダニエルとミラの情事シーンでお茶を濁されちゃう、印象が否
めない。いろいろ並べても、結局、セックスして終わりかいってね。
分厚く面白くなりそうなのに、惜しい。

南イタリア、ジュネーブ、ダニエルとミラのルーツであるポーランド・クラク
フ、とダイナミックな移動をしているのだけど、どうもそのダイナミックな距
離感がつかめないのも、残念なところ。
どの景色も素敵で、「今、ここどこ?」と思うのだけれど、細かいセリフが字
幕に反映されていないのか、そもそも示されていないのか、わからないけれど、
今どこなのか、どれくらい移動したのか、何日経ったのか、ていう空間や時間
の広がりがいまいちつかめなくて、物足りない。
そういうのをちゃんと把握したいなー、と思うほどに、画面はいいんだよな。
だから、惜しい。

人によっていろいろ感じ方はあるでしょう。ぜひぜひ、観た方は、感想を教え
てください。

■COLUMN
作家の名前と言えば、この監督、イタリア人(たぶん)なのに、私と名字がいっ
しょだ! 映画の冒頭でクレジットが出てきたところで、なんだか親近感を抱
いちゃって、これは無下にはできないぞ、て気分になったんだな。

このメルマガをはじめるとき、かっこいいハンドルネームでもつけようか、と
いろいろ迷った。しかし、メルマガ発行のためにはホームページを作らないと
いけなくて、『ゼロからできるホームページづくり』みたいな本を読んだり、
雑事に追われているうちに、だんだん面倒になって、まあ、いっか、普通に本
名でやれば、と最後の方はあんまり考えなくなってしまった。
ただ、中途半端な知り合いに検索で見つけ出されると恥ずかしいかな、と、字
だけ(ひらがなに)変えた。たぶん、私の場合、ひらがなから本名の漢字は、
なかなか思いつかない。
思いつかれたところで、私は著名人でも、著名人の家族でもなし、何も困るこ
とはないわけだけれど。

もっと覚えやすくて親しみやすいハンドルネームのがよかったかなー、とたま
に後悔する。名前って大事なんだから、最後に面倒になるところでもないだろ
うって、自分のいい加減さに苦笑もする。
ブログをはじめとして、普通の人が普通に文章を発表するこの頃、mixiなどの
ニックネームもそうだけど、普通の人がいくつもペンネームやハンドルネーム
や本名を使い分けることは珍しくない。覚えやすくてかわいい、かっこいい、
名前もたくさんある。
みんな、どうやって名前を考えたり、使い分けたりしているんだろう。いくつ
もに分かれちゃって、後で人格統合(?)に困ったりすることないのかな。

最近のちょっとした疑問である。


話変わって。
覆面作家と言えば、私がすっと思いつくのは舞城王太郎。このあいだ、東京・
恵比寿の写真美術館で行われている「文学の触覚」という展覧会に行ったら、
面白い展示があった。

キーボードを打っているディスプレイがそのまま上映されるもので、迷った末
に決めた言葉は大きく表示され、するすると書かれたところは小さい文字で表
示される、という仕掛けだった。一度書いた文章をすさーっと消しているとこ
ろも大きなスクリーンに映し出されたりする。
このシステム上で新作の小説を書くのが舞城王太郎なのだが、経歴、本名、顔
写真等、本人に結びつく情報が発表されていないのに、執筆の現場という、も
のすごーく、作家本人に迫ったところが、こんなに大きく上映されるギャップ
がとても面白かった。

会期は今週の日曜までだそうで、お近くの方、ぜひどうぞ。
http://www.syabi.com/details/bungaku.html

■DVD INFORMATION
そして、デブノーの森へ
価格:¥ 3,131(定価:¥ 3,990)
http://www.amazon.co.jp/dp/B000XJJMM0/ref=nosim/?tag=oushueiga-22

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感想・問い合わせはお気軽に。

編集・発行:あんどうちよ

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