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欧 州 映 画 紀 行
                 No.170   08.04.17配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ オペラは楽しい! ★

作品はこちら
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タイトル:『魔笛』
製作:イギリス/2006年
原題:The Magic Flute  

監督:ケネス・ブラナー(Kenneth Branagh)
出演:ジョセフ・カイザー、エイミー・カーソン、ルネ・パーペ、
   リューボフ・ペトロヴァ、ベンジャミン・ジェイ・デイヴィス
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■STORY&COMMENT
モーツァルトのオペラを、舞台を第一次世界大戦下のヨーロッパに移し映画化
した意欲作。
戦場で、毒ガスによって気を失った兵士タミーノは、「夜の女王」の侍女であ
る3人の従軍看護師に助けられる。彼女たちに暗黒卿ザラストロにさらわれた
夜の女王の娘パミーナの救出を頼まれたタミーノは、魔法の笛を持って、女王
に仕える小心者兵士パパゲーノとともに、パミーナ救出の旅に出る。

とにかく、音楽がいっぱいで楽しい作品だった。
オペラ通ではないのはもちろん、オペラ初心者ですらない私でも、オペラ音楽
の満載は楽しかった。
オペラの要素を取り入れたんじゃなくて、本当にオペラそのもの。役者もオー
ケストラもそのまま舞台でオペラを上演出来るメンバーを連れてきて、CG映像
を含め、映画というメディアならではのファンタジックな映像を作り出す。
オペラに足を運ぶほどじゃないけれど、クラシック音楽は嫌いじゃない、とい
う私のような芸術庶民には、映画でこうして魅せてくれるのがぴったりだ。

ネットの掲示板などをちらちら見たら、ザラストロ役がハマリ役と言われてい
るパーペがいい、との声多し。私なぞ、登場シーンで「財津一郎に似たおっさ
んだ」なんて思っちゃったんだけど。通は、通の目で楽しめるらしい。

DVDだと、今のとこ、よかったなあー、てところでもう1回繰り返し観られる
というのがいい。好きな音楽はCDのリピート機能で何度もかけておくように、
音楽の恍惚って、繰り返し繰り返し浴びたくなるものでしょ。

物語は、そもそもオリジナルの『魔笛』がファンタジックで荒唐無稽。そこに、
戦時下という舞台をくっつけて、平和のメッセージを込めたところが面白いと
思う。愚直なまでの平和と友愛の希求は、ともするとバカみたいになりがちだ
けれど、こういう形だと、美しく伝わるものだ。多人種の合唱での平和のメッ
セージは、現代の作り手ならではの視点でもある。

理知的に分析できる人には怒られるかもしれないけれど、あんまり頭を使わず
に、音楽と映像にうわーんと身をゆだねちゃうのが、いいと思う。

■COLUMN
ヨーロッパの映画では、第一次世界大戦が題材になることが多い、と思う。
塹壕戦が、人と人が戦うことを象徴的に表すから、この作品でも舞台として選
ばれたのか、という気もするけれど、本当のところはよくわからない。

日本では「戦争物」と言ったら、圧倒的に、第二次世界大戦、というか太平洋
戦争の話だ。私が見落としているだけかもしれないが、その前の戦争が、「戦
争物」というジャンルで登場することは少ないのではないだろうか。
その前の話は「歴史物」であって、平和を訴えるとか、戦争の悲しさを伝える
という側面を持つ「戦争物」になることは少ない。
もし、日本で何かの舞台を戦争中に移してリメイクするとなったら、「あの戦
争」はきっと1945年に終わる太平洋戦争だ。

ヨーロッパでも、19世紀以前だと「歴史物」めく。この辺はあくまでもイメー
ジなので、勘違いもあるかもしれない。あしからず。
きっと、20世紀の第一次世界大戦は、欧州の人にとって、現代につながってい
るのだろう。日本では、太平洋戦争くらいまでしか、心理的に現代とつながっ
ていない、ということだろうか。

日清戦争や日露戦争では、徴兵されることが少なく、庶民にとって「(心に刻
むべき)悲劇」とならなかったのかな、などといろいろ想像するけれど、結局、
漠として、「日本は戦争物っつたら太平洋戦争だなあ」というところにとどまっ
たままだ。

何かヒントをお持ちの方、それとも、日本でも第二次より前の「戦争物」がた
くさんあるよ、と思う方、どうぞお知らせください!

■DVD INFORMATION
魔笛
価格:¥ 4,037(定価:¥ 4,935)
http://www.amazon.co.jp/dp/B000YD2NKS/ref=nosim/?tag=oushueiga-22

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編集・発行:あんどうちよ

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