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欧 州 映 画 紀 行
                 No.179   08.07.17配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 旅に出たら、好きな人が別の人に見えてくるって、あるでしょう ★

作品はこちら
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タイトル:『パリ、恋人たちの2日間』
製作:フランス・ドイツ/2007年
原題:2 Days in Paris 

監督・脚本:ジュリー・デルピー(Julie Delpy)
出演:ジュリー・デルピー、アダム・ゴールドバーグ
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■STORY&COMMENT
ジュリー・デルピーが、監督・脚本・主演・音楽・編集・製作をこなした作品。
アメリカで暮らすフランス人写真家マリオンは、アメリカ人の恋人のジャック
とヴェネツィア旅行に行ってきた。その帰り、猫を預けておいたパリの両親の
もとにカップルは2日間滞在する。
言葉は通じない、マリオンの昔の恋人らしき男が次々登場、だんだんジャック
は不機嫌になって……。

ジュリー・デルピーと言えば、国際列車で偶然出会った男女が、意気投合して
ウィーンの街を一日限りの恋人のように歩く『ビフォア・サンライズ 恋人ま
での距離(ディスタンス)』、そして10年後2人がパリで再会する『ビフォア・
サンセット』が思い浮かぶ。(共演イーサン・ホーク)
この2作、話は面白いけれど、街の撮り方が私はどうにも好きになれなかった。
どこがどうと、うまく説明できないんだけれど、とにかく風景の映像が好きじゃ
なかった。恋人が1日とか2日とか短い期間、街を歩くという設定、これらの
2作を思い浮かべるもので、またあの映像の感じかな〜と、心配しながら観た
けれど、街を自然に捉えていて好感が持てた。撮る人が別なんだから、違って
いて当たり前なのだけれど。

旅に出ると、慣れ親しんでいたはずの人が、急に違う面を見せて別人に見えて
きたりする。数年前に話題になった「成田離婚」なんていうのも、その手のも
のかもしれない。
好きな人が別人に見えて孤独になる、そんな瞬間がたっぷりつまった2日間を
送るカップルは、交際2年。この作品ではそこに、国籍の違いという文化衝突
が加わって、話はややこしく、観客にとっては面白くなる。

文句ばっかりたれる態度の悪いタクシー運転手、昔の恋人でも友達づきあいを
するのは普通で、その上当時の話をしゃべりまくるデリカシーのなさ。
アメリカ人のジャックからすると信じられない事態が続く上、滞在先はマリオ
ンの実家。やたらあけすけな両親の相手もしなきゃならなくて、頼りのマリオ
ンは、両親を煙たがってケンカしても、そこはやっぱり故郷。微妙にチャンネ
ルが変わって、「そこのうちの子」にぴたりとおさまってしまう。ふだん見せ
ない別のマリオンに、ジャックには見えるだろう。

マリオンにしたって、「ヨーロッパはテロが起きる」と、偏見丸出しのジャッ
ク、普通に昔の友達に接しているだけなのに、嫉妬深いジャックに疲れはじめ
る。
楽しくロマンチックなはずだった旅行の最後に訪れる危機。カップルはどうこ
れを乗り越えるのか、それとも我慢しきれず壊してしまうのか。
大人になると、情熱だけで関係を決められなくなる。それが果たしていいこと
か、悲しいことなのか。いろんな見方のできる作品。

■COLUMN
正直なところ、すごーく気に入った作品という訳じゃない。ただ、観た後いろ
いろ考えてしまって、これだけひきずるっていうことは、考えていけば何かあ
るということだな、と題材にした。

旅先で好きな人の違う面が見えてくるところ、相手の親や友人に囲まれて所在
ない孤独を味わうこと、国籍の違いとふるまいの違いを、ついつい結びつけて
考えてしまうこと。などなど、「あるよなー」と共感するところがたくさんあっ
て、面白い。
ただ、じゃあ、そういう細かいこと一つひとつが重なって、どんな物語になっ
てるんだろう、というと、ピンとこない。このシーンが面白かった、あのシー
ンがツボだった、あそこは笑えた、あの下りは身につまされた、等々はたくさ
んあるけれど、物語としてまとまる高揚感が感じられない。

たぶん、そこが私が手放しで気に入ることのできないところで、物足りなさが
残る。しかしそれは、作り物っぽくない自然さがあるということでもある。
(キャラクターはかなり作り物っぽいけれど)
マリオンの両親役は、ジュリー・デルピーの本当の両親が演じている、なんて
ところも、その一要素かな。

あるインターナショナルカップルが、彼女の実家を訪れて、もめたり妬いたり
寂しくなったり、すったもんだ。
親のこと、昔の友達のこと、これからの二人のこと、二人の思い出のこと、旅
のこと。いろんなことが、きゅっとまとまることとなんか無縁に、あっちから
こっちから、己のなかから湧いてくる。

だから、全体として何だった、物語としてきれいに組み立てられていた、など
がなくても、あそこがよかった、あのシーンは笑えた、ああいうことかるかも。
そんな楽しみ方できっとよかったのだろう。いろいろ考えていたら、そんな結
論に達した。
うーん、難しく考えすぎ?

ところで、作品のひとつ豆知識というか豆情報。
ヨーロッパのどこの国の映画を観ても出てる印象のダニエル・ブリュールが、
ここでもちらっと出演。びっくりした。カメオ出演かと思ったら、エンドクレ
ジットでは主演カップル2人の後、3番目に登場していたから、通常出演(?)
なのだろうか。ブリュールファンにもおすすめ。
ダニエル・ブリュールについて。よかったらバックナンバーをのぞいてみてく
ださい。
http://oushueiga.net/back/film172.html

■INFORMATION
東京での上映はそろそろ終わりのようです。
角川シネマ新宿と恵比寿ガーデンシネマで7月18日(金)まで。
札幌、佐賀、長崎などで19日(土)より。
その他、全国巡回予定。詳細は公式ページで。
http://paris-2days.com/
http://paris-2days.com/theater.html(上映劇場情報ページに直接)

参考
ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)
価格:¥ 3,440(定価:¥ 3,980)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00092P62Q/ref=nosim/?tag=oushueiga-22

ビフォア・サンセット
価格:¥ 1,500(定価:¥ 1,500)
http://www.amazon.co.jp/dp/B000FQW0RA/ref=nosim/?tag=oushueiga-22

ビフォア・サンセット / ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 ツインパック (初回限定生産)
価格:¥ 5,934(定価:¥ 6,980)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00092P62G/ref=nosim/?tag=oushueiga-22


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