一覧へ ←前へ →次へ 登録フォーム HOME


================================================

欧 州 映 画 紀 行
                 No.186   08.09.25配信
================================================

2週間休むつもりが、気づけば3週間休んでしまいました。
ちょっとバタバタしていますが、また週1ペースで配信していく予定です。
よろしくお願いします。

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 愛する誰かのために ★

作品はこちら
--------------------------------------------------------------------------------
タイトル:『やわらかい手』
製作:ベルギー・ルクセンブルグ・イギリス・ドイツ・フランス/2007年
原題:Irina Palm 

監督:サム・ガルバルスキ(Sam Garbarski)
出演:マリアンヌ・フェイスフル、ミキ・マノイロヴィッチ、
   ケヴィン・ビショップ、シヴォーン・ヒューレット
---------------------------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
ロンドン郊外の小さな町で、夫に先立たれ質素に暮らすマギー。いたって平凡
な生活だけれど、彼女の最愛の孫オリーは、難病で入院していた。ある日、オ
リーが、6週間以内にオーストラリアで最新の手術を受けなければ助からない
と宣告されてしまう。

息子夫婦はすでに治療費のために、借金を重ねている。家はすでに手放した。
マギーは自分が何とかしなければと奔走するが、家がなければ借金はできず、
資格も経験もない初老の女に仕事はない。絶望するなか、ふと目に入った「ホ
ステス募集」の張り紙を見て訪ねると、そこはセックスショップ。募集されて
いたのは、壁の穴ごしに、手で男をイカせる仕事だった。一度は怯むも、孫の
ため、勇気を振り絞って仕事をはじめるマギーだが……

いい年のおばさんが、金の工面のためセックス産業に飛び込む、てところだけ
聞くと、チープで下品なB級映画を想像するかもしれない。私が借りた
TSUTAYAでも、おバカコメディに挟まれてひっそり置かれていた。でも、それ
はまーったくの誤解。TSUTAYA荻窪駅前店さん、ちゃんとしてよね。

きゅっと胸が苦しくなって、観終わると、じんわーと暖かい気持ちになって、
人生って、すごくぶ厚いんだなーと、思わせてくれる。ラストのショットは、
いつまでも頭に残ってて、何でもないときにふとフラッシュバックしてくるな
あ。
だからって、センチメンタルに寄りすぎず、割り切った乾いたテイストも散り
ばめて、バランス良い、人間ドラマ。

源氏名イリーナ・パームとして活躍するマギーの「ブース」には行列ができて、
競合店からスカウトまでやってきてしまう、ちょっと大げさな設定はコミカル
に微笑ましい。
かと思うと入院する孫にお土産を買っていったら、息子の妻に冷たく「困りま
す」と言われる、妙に等身大のリアルさもある。

さびしくて、うまく行かないことがたくさんあって、それでも何とかいいこと
もあって生きている、ちっぽけな人に注がれる眼差しの、暖かい映画だと思う。

憧れのイリーナとして必死に稼いだお金を息子に渡すも、彼は真相を知って並
なみならないショックを受ける(普通に考えてそりゃそうだわな)。こんな金
は受け取れない、オリーにも二度と会うなと、激昂してしまう。

さて、イリーナとオリーと、息子夫婦の行く末は。観てのお楽しみ。
ああ、そっち方面にいくのか、と私はちょっと意外な感じを楽しみましたよ。

■COLUMN
私を知ってる人なら誰でも知っているが、私は、ちょっとしたことですぐに、
精神的に一杯一杯になって、パンクする。
幸いなのは、わりとしょっちゅうパンクするから、「強靱な人がついに心が折
れてしまった」なんて場合にくらべて、すぐに回復するってことだけれど。

たぶん、まだパンクはしていないと思う。
でも、あ、もう摩耗してパンク寸前かも、あ、実は今まさに空気がどんどん抜
けているかも。てな状態を、ここしばらく続けている私だ。

で、そうして一杯一杯になっているがために、ふだんはそうした現金な観方を
バカにしているくせに、うっかり会うもの触れるもの、手当たり次第に教訓や
らアドバイスやらを吸いとりたくなる今日この頃の私である。

短くいこう。
そんな状態の私がこの映画から吸いとった、私がラクになるための教訓。
それは、「もう頑張れなさそうだと思ったら、自分のためより、誰か大切な人
のためにやってみる」。

この教訓、なかなか効きそうだ。

■DVD INFORMATION
やわらかい手 スペシャル・エディション
価格:¥ 3,152(定価:¥ 3,990)
http://www.amazon.co.jp/dp/B001AX11NQ/ref=nosim/?tag=oushueiga-22



---------------

感想・問い合わせはお気軽に。

編集・発行:あんどうちよ

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2008 Chiyo ANDO

---------------

一覧へ ←前へ →次へ 登録フォーム

HOME