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欧 州 映 画 紀 行
                 No.232   10.07.02配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ みんなちょっとずつ悪人。笑って済まそう。★

作品はこちら
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タイトル:『レ・ブロンゼ/再会と友情に乾杯!』
製作:フランス/2006年
原題:Les bronzés 3: amis pour la vie 英語題:Friends Forever

監督:パトリス・ルコント(Patrice Leconte)
出演:ティエリー・レルミット、ジェラール・ジュニョ、
   ジョジアーヌ・バラスコ、ミシェル・ブラン、
   クリスチャン・クラヴィエ、マリ=アンヌ・シャゼル、
   オルネラ・ムーティ、ドミニク・ラヴァナン
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■STORY&COMMENT
パトリス・ルコントが、70年代後半に、リゾート地でのドタバタを描いて世に
出た『レ・ブロンゼ』シリーズが、同じメンバーで帰ってきた。すっかり中年
になったメンバーたちが再会し、またもや大騒ぎの物語がはじまる。

定期的にこういうジャンルの映画を紹介してる気がするけれど、「バカバカし
いコメディ」。深刻なドラマは脚本が粗いと(あくまで私の基準だけども)な
んだかのれないけれど、バカバカしくて、教訓もなんにもないようなコメディ
は多少何かが粗くても許せてしまう。

先行するシリーズ作品を私は観ていないので、前半はちょっと登場人物のキャ
ラクターを把握するのに時間がかかった。しかし、キャラクターをわかってい
ないと楽しめない、と思い込んで一生懸命把握しなくっちゃ、と思っていただ
けで、実際は、ぼーっと観てても難なく把握できるから、そんなに気にしない
でいい。

イタリアのリゾートホテルのオーナーとなった“ポペイ”のもとに、集まった
旧いリゾート仲間たち。
患者に訴えられ文無しになった美容整形医、アメリカで成功し、場違いなスタ
イルで闊歩する美容師、自分の犬が何より大事な奥様、などなどひじょうにわ
かりやすいキャラクターが繰り広げる、元妻を追いかける三角関係や、息子の
ゲイ問題、金持ちへのねたみ、下世話で誰でも吹き出せるドタバタの応酬だ。
洗練されているとは言いがたいけれど、こんな梅雨時のうっとおしい季節には、
難しいこと抜きにして笑える作品。
しかし、ダレることなく次から次へと新しい問題を起こしてテンポよく物語を
進めていく術は、隠れた「洗練」なのかもしれない。

脚本は出演者の何人かによる共同作業。昔の仲間が集まって、ワイワイ作った
んだろうと想像には難くない。楽しそうだと思うけれど、その雰囲気が内輪受
けだと感じる人がいるかな、ということも否定はできない。
絶対おすすめ、というほどではないけれど、気楽に笑って、すぐに忘れて明日
へ向かいたいあなたに!
(書いてて自分でも何言ってんだかよくわかんないけど)

■COLUMN
お国柄で片付けることはあまり好きではないのだけれど、フランスのコメディ、
(必ずしも笑う要素がなくても人間模様を描いた作品)というのの、面白くて
怖いところは、他人を意地悪に見つめる人の存在を隠さないところだ。

この映画の登場人物たちは、周りの人間の、うざいところや滑稽なところ、平
気でみな嫌がったり、めんどくさがったり、ときにはばかにしたりしている。
日本の作品だと、そこで、でも「ホニャララないいところはあるし」ていうよ
うなエクスキューズが、バカにされた側にも、バカにした側の性格描写にも付
け足されたりするのだが、そういういいわけめいたことがフランス人気質には
不要なんだろう。

もちろん、作品に表れる人間観と実際の生活が同じというわけではないから、
そこは、勝手にフランス人の現実を見たらいけないが。

親しい人に対しても「めんどくさいな」「うざいよ」と思うことはあって、そ
れでもその人のことは好きなんだけど、そんな嫌な面には意地悪な視線を向け
てしまう。また、親しくない人に対してもそれなりに悪く思ってはまあ、別に
そんなことは外に出さずに善人ヅラをして生活しているのが、私たちの日常。
それをことさらに「嫌な面」として出さずに日常として流したり笑ったりでき
る乾いた感覚が、いいなあと思う。笑ったまま後腐れなく終われる。
だけども、自分も人のことを日常的に批判がましく見てるかな、誰かからそう
やって見られてるかな、と思うとやっぱり怖い。
人を自然に描くってのは面白くて怖いことなんだと思う。

あ、いやそれにしても、「人を自然に描く」と評するにはこの映画、バカバカ
しい問題が多く起きすぎる。「人を自然に眺めて、それを大げさに凝縮して描
いた」が正しいかな。

それなりに悪人で度量が狭くて意地悪で、でも誰かに同じ意地悪を向けられた
らちょっと悲しい。
そんな弱い人は(つまり私のこと)どこかで、そんな小さい悪人ぶりを言い訳
しながら、謝りながら(誰にだろう?)毎日うじうじしてるから、善人である
ということを拠り所にしないで、みんなそこそこの悪人ぶりを共有できるなら、
ずいぶん楽だと思うんだ。

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★前号の訂正とおわび
「まぐまぐ」でお読みの皆さんには、前号の「件名」で、
作品タイトルを間違って送付してしまいました。
彼女のはサビーヌ
となっていましたが、正しくは、もちろん
彼女の名はサビーヌ
です。ごめんなさい。

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