「つぶやき」目次 バックナンバー目次 登録フォーム HOME

「ミナ」

No.028 本誌発行日 2004年11月18日  本誌バックナンバーへ

(04.12.24 のつぶやき)

最後にミナが自殺してしまうところ。
何も死ななくても……、という意見もあるようだけれど。
私は本当に共感できる。

昔の恋人にばったりでくわして、
「今でも君のことを想う」といわれ、
けんかしたっきり音信不通だった親友にも再会。
前と変わらぬ関係を続けられそうな気配だ。

いいことなんかひとつもなかった
彼女の人生に急に光が差し始める。
やれるかもしれない。私にはきっと才能がある。
いままで沈みきっていたからこそ、
急に差した光はまぶしく、
今この瞬間からはすべてがうまくいくような気がしてくる。

電話が鳴り、留守番メッセージに吹き込まれる親友のあっけらかんとした声
「都合が悪くなったから、また今度」
今差した光を、突然断ち切るできごと。

突然そんなふうに、光を見る人は、その光のまま
たまたまうまくいけばいいけれど、何かうまくいかないことがあると
そのままプツンと切れてしまう。
ちょっとしたできごとで、なにもかもがいくように思えたように
ちょっとしたできごとで、なにもかもがおしまいであるように思いこむ。

幾多のそんなつかの間の光と、突然光を断たれた
幾多の絶望のただなかにいることを、私は見た。
こうしてメルマガを発刊しているように
幸い生きてここにいる。だから、体験したとは言えないのかもしれないが。

以前に見たときには、このミナの気持ちのブレが、
自分のことのように感じられて、
同化したように思いっきり泣いた記憶がある。
だけれど今回メルマガのために見直したら
もちろんミナの気持ちも痛く受けとめたけれど、
どこか、私の視点は、逝ってしまう者よりも
残された者の方に向けられていた。

あのミナの光と絶望との落差は、いつの間にか
私のこととは受けとめられなくなっていた。

それは、年をとって感受性が鈍ったのか、強くなれたのか
あー、私も少しは成長したのかもしれないな、
と思うと同時に、昔はあんなに共感できた自分はいないのかと
少し寂しくも感じた。

本誌バックナンバーへ

Copyright(C)2004 Chiyo ANDO



「つぶやき」目次 バックナンバー目次 登録フォーム

HOME