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「リトル・ダンサー」

No.038 本誌発行日 2005年2月10日  本誌バックナンバーへ

(05.3.13 のつぶやき)

ビリーが成長して一流ダンサーとなった後日談が、
映画ではちらりと紹介されている。
その成長した姿役として特別出演したのが、
英国の人気ダンサー、アダム・クーパーだ。

父や兄が見守り、ゲイの幼なじみが「こんな機会逃すわけにいかない」と意味深に微笑む中
彼が踊るのが、白鳥を全員、男性ダンサーが演ずるという話題の演目「白鳥の湖」である。
「王子」と「男の白鳥」の愛と交流と苦悩の物語「白鳥の湖」だ。

あまりダンスやバレーを見る習慣のない私だが、この映画をきっかけに、
白鳥が男という「白鳥の湖」に興味を持った。ら、そんなところへひょっこりと
東京にこの「マシュー・ボーンの白鳥の湖」がやってきた。

「行きたいけど、ちと予算がなあ、むにゃむにゃ」と迷っていたところ
折良く、インターネットの掲示板でこのチケットを半額で譲ってくださるという方を見つけて ココです
2005年3月6日、私には珍しいバレエ鑑賞とあいなった。

アダム・クーパーはすでに白鳥役は降りていて、新世代のニューキャストに一新。
それは少し残念だけれど、その「白鳥の湖」がいったいどんなものやら、まったく未知でいた私には十分に楽しかった。
解釈のしようで、いろんな受けとめ方ができるんだろうな、と想像力を刺激される舞台。
それは恋愛なのか憧れなのか、白鳥ははたしてそれは本当に「白鳥」なのか。
あることないこと、想像しては解釈して、解釈を解体してはまた解釈する。
心地よく頭を使って、人間の肉体の動きの可能性の高さを堪能して、うれしい時間を過ごした。

成長したビリーにわざわざこの白鳥を踊らせた意味って何だろう、と考えると
一つではないだろうけれど、炭坑の町で育った異色のダンサーが
ただの色物でもなく、伝統に組み込まれるでもなく
彼の大好きなバレエの世界に新風を巻き起こし、進歩させていく、
異色のダンサーの真の成功だ、てところなのかな。

今回の舞台を見て、今ひとつ意味するところをはかりかねていた
ラスト・シーンを理解できた気がする。
そして、今ひとつ理解しかねていたバレエ・ダンスファンの気持ちも。


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