一覧へ ←前へ →次へ 登録フォーム HOME


============================================================

欧 州 映 画 紀 行
                 No.070
============================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ 私の町の光はどんな具合? ++



作品はこちら
------------------------------------------------------------------
タイトル:「オランダの光」
製作:オランダ/2003年

原題:Hollands licht 英語題:Dutch Light
監督:ピーター=リム・デ・クローン(Pieter-Rim de Kroon)
------------------------------------------------------------------
  ケータイ等に作品の情報を送る

■STORY
オランダ独特の光を追ったドキュメンタリー。

オランダ絵画には、オランダという土地にある独特の自然光“オランダの光”
による、他に類を見ない魅力があると言われている。
しかし、ドイツの美術作家ヨーゼフ・ボイスは、干拓事業により、かつてのよ
うな“オランダの光”は永遠に失われたと言った。

果たして本当に“オランダの光”は失われたのか、そもそも“オランダの光”
とはどのようなものなのか。
美術作家、美術史家、気象学者、天文物理学者、など様々な人々へのインタ
ビューと、定点観測から、“オランダの光”に迫る。

■COMMENT
出発点が「絵画」なので、絵の謎解きドキュメントと思われるかもしれない。
もちろん、オランダ絵画が光をどう表現してきたのか、はこの作品の重要なテー
マではある。絵の好きな人なら、ここに特に注目するだろう。
だが、もっとも大切なのは「光」そのもの。だから、ひょっとして、絵画もの
・美術ものは苦手だなーと思う人がいても、まったく心配ない。

景色があって、その光をどう表現するか、どう見るか、この土地の光は他とは
どう違うのか。その光とは、日常、誰もが触れている(見ている? 知覚して
いる?)ものだ。

とはいっても、光を見る、なんて、ふだん考えるだろうか。
私は考えもしなかった。
真っ暗じゃ何にも見えないから、何かを見るために、光は必要なものであって、
光そのものを考えるにしても、明るいとか暗いとか、もっぱら量の問題だった。
そうじゃなければ、ビビッドだとか淡いとか、色彩に置き換えていた。光の質
を考えても、それはたいがい人工照明について。自然光の質なんて考えたこと
がなかった。

そういう<考えたことがなかった>ところに連れて行ってくれるのが、この作
品の魅力。いろいろな立場の人へのインタビューからは、それぞれの答えが出
てきて、明確にこれが答えときっぱりする何かはない。だけれど観賞後には、
1年間の定点観測を行った堤防の映像や、美術作家や物理学者の意見を通して、
光を見ることができるようになっている。

観た後しばらくは、周囲の光のあり方が気になるだろう。我が町の光はどんな
具合かと、旅行で訪れたかの地は、故郷の思い出の場所はいかなる光を持った
かと、気になるに違いない。

山の多い日本では、なかなか見られない見渡す限りの地平線や、静かに力強く
まわる風車、そしてその独特の光を生みだす要素となっているであろうふんだ
んな水。オランダの景色をゆっくりと見られることも、大きな魅力である。

■COLUMN
専門家たちだけでなく、ヨーロッパを縦断するトラック運転手たちへのインタ
ビューもおもしろい。スペインの光とオランダの光の違い、自分の住む町とオ
ランダとの違い、「光」について尋ねれば誰もが一家言持っている。
トラックの運ちゃん、光を語る。妙にかっこいいじゃない。

これは陸続きで、しかもEUとして経済圏を同じくしているからのこと。島国日
本では車で国境を越え、国、地域で移り変わる光を語れるドライバーなんてい
ないからなー、と、思いながら、ほんとにそうなのかな、と調べてみた。
そうしたら、必要書類を揃えてフェリーに乗れば、車ごと海外に行くのは、そ
んなに難しいことじゃないとわかった。
いろいろなサイトをのぞくと、マイカーで韓国を旅することを趣味にしている
人、サハリンでツーリングを楽しむ人もいる。

じゃあ、トラックはどうなんだろう。韓国(中国でもロシアでもいいけれど)
で荷を積んで、日本に渡って荷を届ける。あるいはその逆のルート、それを日
常的にやっている運送会社はないんだろうか。
調べてみたけれど、残念ながらそれは見つからなかった。
でも、下関と釜山を結ぶ関釜フェリーのホームページ
(http://www.kampuferry.co.jp/)には、貨物サービスやトラック搬送に関す
る案内が見られるから、きっとそういう事例はあるんだと思う。

採算がとれるとか、とれないとか、全然想像がつかないけれど、国際長距離ト
ラック路線が、日本と他のアジア地域で頻繁に結ばれるようになったら、互い
の国が心理的にも近づけるようになるんじゃないかな。
こんな夢想にも連れて行ってくれる映画だった。


---------------

感想・問い合わせはお気軽に。掲示板、またはメールでお願いします。→筆者へのメール

転載には許可が必要です。
リンクは自由です。

編集・発行:あんどうちよ

Copyright(C)2004-2005 Chiyo ANDO

---------------


一覧へ ←前へ →次へ 登録フォーム

HOME