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欧 州 映 画 紀 行
                 No.104
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 手元の5000万円が、もうすぐ紙くずになるとしたら ★

作品はこちら
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タイトル:『ミリオンズ』
製作:イギリス・アメリカ/2004年
原題:Millions  

監督:ダニー・ボイル
出演:アレックス・エテル 、ルイス・マクギボン 、
   ジェームズ・ネスビット、デイジー・ドノヴァン
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■STORY&COMMENT
母を亡くして父と郊外の新居に移り住んだアンソニーとダミアンの兄弟。
ダミアンが段ボールで作った隠れ家に、ある日バッグに詰められた大金が降っ
てきた。その額22万9520ポンド。折しも12日後にイギリスもついにユーロに切
り替わることになっている。子供だけじゃあ、銀行口座も開けない、札束はす
ぐに紙くずに変わってしまう。さあ、12日間で22万ポンドを使いきれ!

聖人の話が大好きで、皆がサッカー選手の名を挙げる「尊敬する人」の質問に、
聖人の逸話を長々と話してクラスで浮いてしまうダミアン。彼のもとには聖人
もよく姿を現すが、他の人にはそれが見えない。
それに対し兄のアンソニーは、新居の話でも売ったらいくらになるか、など、
賢くお金を増やすことに興味がある、現代っ子ならではのキャラクター。

アンソニーは大金を手にして、友達に金を渡して食堂の行列や登校時の荷物持
ちを肩代わりさせ、あとはゲームやら何やら欲しい物をどんどん買おうとする
が、ダミアンは貧しい人に配りたいと言う。しかしダミアン、貧しい人の何か
るかをよく分かっていなかったりする。
こんな対照的な兄弟のやりとりの軽妙さにプラス、現金の持ち主らしい強盗犯
が金を奪い返そうとダミアンに近づいてきて、スリルも加えられる楽しい作品。

大金を手にして、しかもそれを早急に、現金で使い切らないといけないとなる
と、そう簡単に、いい案を出せないもの。ダミアンのように善を施し人に寄付
するのもいいけれど、級友に金をばらまいて面倒なことをやってもらうアンソ
ニーの方が、現実的だと思ってしまう、私は正真正銘の俗物だ。
思えば「将来のためにとっておく」という選択肢をなくしたら、お金をどんど
ん使って豪勢にやれるんだ。使っても使っても使い切れない様子は、観ている
だけでリッチな気分になれるし、約5000万円、自分なら何に使うかな、と考え
るのも楽しい。

ボイル監督が自分の子供にも見てもらえるようにと、作った映画、その方面が
好みなら、子供と一緒にお金の使い方を考える、なんて教育的用途もあり。俗
物の私としては、シニカルに笑う方が好みだが。

■COLUMN
日本人評の定番「島国根性」というやつに似ているのか、実際にはイギリスは
まだ頑固にポンドを使い続けている。頑固なイギリス人気質はまだしばらく自
前の通貨を大切にし続けるような気がするが、いよいよ、という時が本当にやっ
てきたら世相はどうなるんだろう。

劇中、政府が打ったんであろう通貨切り替えキャンペーンのCMが登場する。サ
ンタの格好をした美女を隣に乗せたじいさんが、鼻の下を伸ばして「私の彼女
はこう言っています」と切り替えをアピールする。毎日、あと何日とカウント
ダウンするから、内容は日替わりだ。交換レートや両替方法などなど。サンタ
の格好は切り替えの「X・デー」がクリスマスだから。
難しい話を無理矢理軽いタッチにしたような、いかにも政府のキャンペーンで
やりそうな感じだ。長年参加を拒否してきた割に、導入となれば拍子抜けする
ほど楽天的で楽しそう。なんだか実にありそうな顛末だと思う。

「銀行預金は自動的に切り替えられます。交換は預金が簡単。この機会に口座
開設を。」と呼びかける銀行のビジネスチャンスのつかみかたは、いずこの国
も同じだ。
22万ポンドあったらどうしよう、という想像とともに、もし今日本で通貨の切
り替えがあったなら、と想像するのも楽しい。
どうせなら、この映画のように享楽的に楽天的に、パーティっぽくしたいなあ。

■INFORMATION

blog版にもどうぞ
http://mille-feuilles.seesaa.net/

なんだか統一感のない筆者の本棚公開中
http://booklog.jp/users/feuille

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編集・発行:あんどうちよ

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