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欧 州 映 画 紀 行
                 No.107
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 20年来の三角関係の結末は ★

作品はこちら
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タイトル:『恋路』
製作:フランス/1991年
原題:La Reine blanche 英語題:不明

監督・脚本:ジャン=ルー・ユベール(Jean-Loup Hubert)
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、リシャール・ボーランジェ、
   ベルナール・ジロドー 、ジャン・カルメ
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■STORY&COMMENT
1960年頃、フランス・ナント近くの小さな港町。リリアンヌとジャンは、水道
業を営み、4人の子供とリリアンヌの父とともに暮らしていた。ある日、昔の友
人ルガルデックが、20年ぶりに町に戻ったことを知る。イヴォン・ルガルデッ
クとジャンは、かつてリリアンヌを争った仲だった。
イヴォンの帰郷により、平穏に過ぎていた20年の夫婦生活に少しずつ波風が立
ち始める。

個人的な作品との出会いを少々。イタリア映画とフランス映画、2本を観ていま
いち。「ああ、今週紹介する映画がないよ、困ったな」と思っていたところ見
つけたのが、我が家のハードディスクレコーダー「スゴ録」の中に録画されて
いた、このやたらクラシックな題名の作品である。8月にNHK-BSで録画したらし
いが、全然覚えていない。題名から古いモノクロの作品と思いきや、案外最近
の作品の様子。何の映画だろう、と試しに再生をして、そのまま最後まで観て
しまった。

3人の三角関係に何があったのか、少しずつ明らかにされていくミステリー要
素、3人が互いに抱く心情は、愛憎入り混じって緊張感ある心理劇をひきだす。
こぢんまりとした舞台と同じように小品だが、何となく気になって最後までひ
きずられて、ラストはちょっとしんみりと心が温まる。
全体的にテレビドラマっぽい俗っぽさもあるけれど、それは「安心してドキド
キ心を揺らせられる」保証でもある。

かつて町のミスコンテストで優勝し「女王」となったリリアンヌを、友人から
横取りしたような形になってジャンは負い目があり、イヴォンは最後までリリ
アンヌを愛せなかった後悔をかかえ、直接心を吐露させることなく意地を張り
合う男どもは、滑稽で少し悲しい。
こういうことってあるよね、と共感する場面の多い、愛すべきキャラクターの
登場する佳作であった。

■COLUMN
水道業者(つまりはジャンのところ)に、まだ馴染みが薄いらしい「バスタブ」
を夫婦がはじめて買いに来て、イヴォンが南の島から連れてきた黒人の妻と混
血(子供らは「カフェ・オ・レ」と呼ぶ)の子供たちが町の噂になる頃。60年
代はじめの世相を随所に感じられる。

肌の色の違う子供たちとの交流を、リリアンヌは子供たちがいろいろな人とつ
きあっていくための勉強になると捉えるあたりも、「いろいろな人たちがフラ
ンスに多く住むようになった現実」と「その現実をふまえて、差別心なくやっ
ていく必要を多くが考えるようになった風潮」の両方が見て取れて興味深い。

ナントという、日本人にはあまり馴染みのない町をのぞいてみる面白みもある。
年代の重みを感じさせるパッサージュは、建物を眺めるだけで楽しい。
多くの山車が出るカーニヴァルは、町の一大イベント。ナントの町のカーニヴァ
ルが、現在どんなものなのかはわからないが、もっと現代的にアレンジされて
いても、この心が騒ぐお祭りの雰囲気、ジャンが一生懸命製作するような山車
にかける町の人の心は変わらないのではないかと思う。

「一応」と思い、ナント市観光局のHPで確認したら、写真から伝わる熱気や賑
やかさは、映画から感じたものとほとんど変わらなかった。ついでに、このカー
ニヴァルはフランスで2番目に大きくて、35万人の見物客が訪れるという豆知識
も仕入れることができた。
http://www.nantes-tourisme.com/
http://www.comitedesfetes-nantes.com/photos.php

ナントの見所をおさえたこの映画は、ナントの観光映画としても機能している。
空間と時間の両方のヴァーチャル旅行が楽しめる作品だった。

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編集・発行:あんどうちよ

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