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欧 州 映 画 紀 行
                 No.203   09.04.11配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ デザートみたいに気軽にハッピー ★

作品はこちら
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タイトル:『モンテーニュ通りのカフェ』
製作:フランス/2006年
原題:Fauteuils d'orchestre
  英語題:Orchestra Seats  もしくは Avenue Montaigne

監督・共同脚本:ダニエル・トンプソン(Danièle Thompson)
出演:セシル・ドゥ・フランス、ヴァレリー・ルメルシェ、
   アルベール・デュポンテル、クロード・ブラッスール、
   クリストファー・トンプソン(共同脚本)、ダニ、ラウラ・モランテ
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■STORY&COMMENT
パリ、モンテーニュ通り。豪奢なブティックが建ち並ぶ高級なエリアに、シャ
ンゼリゼ劇場はある。向かいのカフェ・ド・テアトルは、劇場の関係者やこの
地区で働く人がやってくる、名物カフェだ。
田舎からパリにやってきたジェシカは、運良くこのカフェで給仕の職を得る。
カフェと彼女を中心に、劇場に集う人々を描く群像劇。

軽くてかわいい、ティータイムでもディナーの後でも楽しめるデザートのよう
な作品。
観る人の境遇にもよると思うけれど、自分の人生を振り返っちゃったり、人の
業とか存在の切なさとかを考えたり、てことはなしに、「あー、おいしかったー」
とにっこりさっぱりハッピーになれる。
そこが正直に言えば物足りなくもあるけれど、プチハッピーを間違いなく感じ
られる作品としておすすめだ。

シャンゼリゼ劇場で、芝居の初日を待つ女優カトリーヌは、昼メロが好評で人
気も収入も十分だが、そんな低俗なものより映画に出演したい。元夫の演出の
今回の芝居も、なんだかパッとしなくてストレスがたまっている。

有名ピアニストのジャン=フランソワは、堅苦しいコンサートよりも、病院や
刑務所の訪問など音楽に縁遠い人に音楽を届ける活動にシフトしたいと考えて
いて、マネージャーでもある妻との関係が壊れかかっている。

長年かかって収集した美術品コレクションをすべてオークションにかけようよ
しているジャックは、妻に先立たれ今は若い愛人がいる。不仲の息子は、愛人
のことと母の気に入りだった作品まで売ることが不満だ。

いろいろな人がいろいろな用事で集う劇場には、社会的地位や名声がありなが
らも何かがうまくいかなくて、欲求不満を抱えた人がいる。そんな人たちの、
人生の再出発を優しく見守る。

バラバラに進行するそれぞれの「不満な人々」だが、カフェ給仕ジェシカが、
それぞれにちょっと影響を与えて、それぞれの物語をつなぎ合わせる役目をし
ている。
ジェシカを演ずるセシル・ドゥ・フランスは、私にはどうも演技がくどい印象
があったのだけれど、この作品では、心の底から明るくて、でもその明るさに
嫌みやうるささがない、「太陽のような」女の子を好演していたと思う。

■COLUMN
おそらく意識的に舞台である「パリ」の街を見せようとしている映画。空から
の映像や、劇場の屋上から見た街の風景、エッフェル塔を入れたシーンなどが
ところどころに差し込まれる。
「映画を観て旅行した気分になろう」のこのメルマガに、ぴったりの作品でも
ある。

ここに登場するシャンゼリゼ劇場や、その向かいのカフェは実在のもので、全
面協力によるオールロケだったのだろうか。詳しいことはわからなかったけれ
ど、「本物の場所」があることがドキュメンタリーぽくてリアリティを作って
いると思う。

グーグルのストリートビューで見てみると、ジェシカが働いているカフェが、
ここ。ぐるっとまわって通りの斜め向かいに、シャンゼリゼ劇場がある。
最近は映画なんか観なくたって、これだけでけっこう行った気になれてしまう
んだなあ。

シャンゼリゼ劇場は、芝居やコンサートが開かれ、作品中ではオークション会
場にもなる、複合文化施設。東京でいうと、渋谷のBunkamuraみたいなところか
な。小さめの劇場も大ホールも美術館も映画館もあって、シャンゼリゼ劇場よ
りも規模は大きいのかもしれない。
Bunkamuraには、毎日たくさんの「観客」が訪れる。私が観客として訪れるとき
のことを思い出してみると、たとえば、シアターコクーンに芝居を観に行った
ときに、そのとき同じ芝居を観る別の観客とは、ある種の一体感を持てるけれ
ど、同じ日にオーチャードホールのバレエやオーケストラに訪れた観客のこと
なんか気にしない。逆もしかり。

そういうことを考えてたら、こうした複合施設にやってくるお客さんの群像劇
てなものを、観てみたいなと思う。
劇場の舞台上にもドラマはあるけれど、それにやってくる観客もそれぞれドラ
マを背負ってる。辛さをおして観に来た人もいるだろうし、うきうきとデート
を楽しむ人もいるだろう。
つかの間の空間を共にする人々のうちの何人かにスポットをあてたら、きっと
おもしろいものができるんじゃないかなあ。

■INFORMATION
★DVD
モンテーニュ通りのカフェ [DVD]
価格:¥ 3,416(定価:¥ 3,990)
http://www.amazon.co.jp/dp/B001FZSSOY/ref=nosim/?tag=oushueiga-22

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編集・発行:あんどうちよ

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