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欧 州 映 画 紀 行
                 No.221   09.10.22配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 旅の緊張感と楽しさと寂しさを ★

作品はこちら
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タイトル:『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』
製作:ドイツ・スペイン/2005年
原題:One Day in Europe 

監督・脚本:ハネス・シュテーア(Hannes Stöhr)
出演:ミーガン・ゲイ、ルドミラ・ツヴェートコヴァ、フロリアン・ルーカス、
   エルダル・イルディズ、ペーター・シェラー、ミゲル・デ・リラ、
   ラシダ・ブラクニ、ボリス・アルキエア
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■STORY&COMMENT
サッカーのチャンピオンズリーグ決勝戦「ガラタサライ対デポルティボ・ラ・
コルーニャ」が行われる1日を舞台にヨーロッパ4都市で繰り広げられる4つの
物語。
決勝戦が舞台のモスクワ、2チームの本拠地イスタンブール、サンティアゴ・デ・
コンポステーラ、それにベルリンがそれぞれの舞台。どのエピソードも、その
地を訪れる外国人の旅行者が主人公となり、強盗にまつわる物語が繰り広げら
れる。
ちなみにこの決勝戦は架空の試合(本物だったら、ヨーロッパの頂上クラブを
決める試合としてはちと地味すぎるかな)。

サッカーの大きな試合の日を舞台にしているけれど、サッカー自体は話にはそ
れほど関係ない。サポーターが闊歩している、テレビの前で皆が応援している、
など、「ふだんとは違う日」の演出と、ある1つのイベントを通じて遠いところ
の都市が結ばれるイメージの呼び覚ましのアイテムになっている。

旅行者の浮き足だった感覚と、所在ない感覚、お決まりの警察の不親切な態度、
そして、旅へと誘われる異国の景色(ただしモスクワはそれほどでも!)、大
きなドラマはないけれど、おかしさと哀しさの同居したかわいいオムニバスだ。
ロシアのイギリス人、トルコのドイツ人、スペインのハンガリー人、ドイツの
フランス人、どの話も気が利いているのだけれど、私はトルコで狂言強盗をす
るドイツの若者の話が好き。
狂言がいつばれてしまうんだろう、という適度なサスペンスと、最終的にサッ
カーが人をつなぐあったかさが心地よい。

もうひとつ、私がこの作品でとっても気に入ったところは、とても笑うような
場面ではないところで、思わず吹き出すようなセリフやシーンがあること。緊
張感と、それがほどけた落差で小さなことで笑ってしまう、旅での精神状態が
再現されるような気がして。
それも頻発するんではなくて、忘れた頃に、たまにそんなシーンがくるところ、
品がいい。
たとえば、強盗にあったイギリス女性が、モスクワのおばさんに電話を借りよ
うと「telephone、telephone」と言ってもなかなか通じないから、とりあえず、
「フォーン、スキー」て言ってみるシーン。言ってる本人は大真面目だから、
よぶんにおかしい。

旅先の緊張と、ちょっと心細い気持ち、異国で浮き立つ気持ちと、それらを併
せ持った旅人たちの少し笑える所業、とるに足らないといえばそんなもんだけ
れど、かわいく趣のある作品。疲れて異国に心を飛ばしたい夜にどうぞ。

■COLUMN
もう、ずーいぶん旅に行っていない。
もともとひどい出不精で、休みになればゆっくり寝て、本でも読んで映画でも
観て、とだらだらした日常を拡大して過ごすのが私のお決まりだから、日帰り
で別の町に遊びに行くことも滅多にない。

それでも以前は、1年に1回くらいは、どこか他の土地に物見遊山に出かけるこ
とはあったと思うけれど、ここ3年くらい、帰省と仕事を除くと本当にどこにも
旅行に行っていないのではないかと思う。

出不精に加えて、仕事の都合でまとまった時間のとれるタイミングが前もって
わからず、旅行の計画が立てにくいこともあって、どこか別の土地へ遊びに行
くことが、どうしても後回しになる。だけれど、1泊2泊の旅に思い立って出か
けることくらい、できないことじゃない。誰かのせいでも仕事の都合でもなく、
流行り言葉(?)で言えば「努力不足・自己責任」てやつかな。
そのくせ、誰かが旅行に行った話を聞けば「いいなあいいなあ、あたし最近ど
こにも行ってないよー、いいなあ」を連発するのだから世話はない。
でも、旅の土産話を聞かせてくれる人は、「いいなあ」と言われて気分は害さ
ないでしょ。だから持ちつ持たれつなの。

今年のはじめにパスポートが切れたときも、「いつでも旅に出られるようにし
ておきたい」なんて言いながら、どうせどこにも行かないままに有効期限ばか
りが消費されるのが悔しくて、そのままになっている。
でも、やっぱり、旅立ちのときって、ふと突然やってくることもあるから、パ
スポートくらいは作っておこうか、どうしようか、と、今年はずっと迷ったま
まに“ぐずぐず”だ。
試しに新しいパスポートにしたなら、どこにも行かずともせめて“ぐずぐず”
だけは治まるか、ほんのちょっとでも心が軽くなるか、なんて思っている。

こんなぐずぐず出不精には、パスポート取得のため電車で15分弱の都庁に行く
のも、一仕事であるんだけども。

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★DVD
『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』¥3,990

★コメントくださった方へお返事
・ポポンタ・パンチョス さま
おお!マイケル・ナイマン、お好きですかー。前回の作品をきっかけに、ナイ
マン参加の映画をもっとチェックしようかと思っています。「ゼッタイオスス
メ」があったら、ぜひ教えてくださいね!


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編集・発行:あんどうちよ

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