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欧 州 映 画 紀 行
                 No.230   10.05.31配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 日頃使わない、感情と感覚の筋肉を、鍛えてみませんか ★

作品はこちら
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タイトル:『ウェディング・ベルを鳴らせ!』
製作:セルビア、フランス/2007年
原題:Zavet 英語題:Promise Me This

監督・脚本:エミール・クストリッツァ(Emir Kusturica)
出演:ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ、マリヤ・ペトロニイェヴィッチ、
   リリャナ・ブラゴイェヴィッチ、ストリボール・クストリッツァ、
   ミキ・マノイロヴィッチ、アレクサンダル・ベルチェク
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■STORY&COMMENT
田舎で暮らす少年ツァーネは祖父と二人暮らし。自分の死後のツァーネを思っ
た祖父は、ツァーネに牛と3つの約束を持たせて町へ送り出した。1.牛を売っ
てイコンを買ってくる 2.何かお土産を買う 3.花嫁を見つけてくる 
町にやってきたツァーネは、美しく元気なヤスナに出会って一目惚れ、しかし
ヤスナは母の借金のカタにヤクザに売られようとしていて……。
ギャングとの闘いに勝ち、ヤスナを助けて結婚することができるのか。

バカ騒ぎです。下品です。上のストーリー説明、特に気にしないが正解です。
巨匠と呼ばれるようになると、こういうバカなことをやっても大真面目に受け
止めてもらえるという好例。
その分、緻密な心理描写がどうのこうのと言わないでも、後先考えず、結ばれ
る愛を手放しで祝福。その恍惚がストレートに伝わってくる。

発明家の祖父のいろいろな仕掛けで、やってくる人々がいちいち落とし穴に落
ちる。家やら窓やらが崩れる。クライマックスでは頭突きで建物を壊しちゃう
とか。ギャグマンガをそのまま映画にしたようなシーンがいくつも出てくる。

とても真面目な人は腹を立てるかもしれないから、そういう人にはあんまりお
すすめしない。それから、映画に描かれているところまでが限界で、この場で
文字で説明してしまうと本当に下品になるから説明はしないけれど、人によっ
てはそれだけで拒否なんじゃないかと思う場面もあるから、注意。

ストーリーはスピード感で駆け抜けて、色やイメージや、頭を使わないギャグ
に、刹那的に反応すればいい映画なんじゃないかと思う。
ま、正直に言うと、クストリッツァ作品では『アンダーグラウンド』とか『ラ
イフ・イズ・ミラクル』とか、大騒ぎのなかにも、政治や社会への皮肉がこめ
られた作品の方が好みではある。
しかし、理屈をこねるんじゃなく、音や色や映像やシーンの展開で、観客の感
覚を刺激して、ふだん使わない感覚と感情の「筋肉」を使わせてくれるところ
はさすが。決して、下品で直接的なギャグを並べただけの映画じゃない。

日常では使わない感情の筋肉を刺激してくれて、この世界に酔ったように楽し
める。酔った世界は観る人それぞれが構築していい。自由に、身をゆだねて、
浸ってください。

■COLUMN
前も書いたかもしれないけれど、私は実に暗い子供時代を送っていて(今も根
は暗いですが)、マンガ『ドクタースランプ』を読んで、どうしてこんなふう
に、笑ってあっけらかんと暮らせないんだろうかと涙するような子供だった。

それなりに人生の荒波をくぐり抜けた(笑)せいか、もうそれほどナイーブで
もない大人だけれど、「このあっけらかんとした世界」にどうしてもあこがれ
てしまう気持ちは健在だ。
「後は野となれ山となれ」とさえ考えないほどに、とりあえず行動し、物が壊
れようが、人が転がろうが、気にしない。まあ、何とかなる。
そんな世界は、もちろん現実的ではない。しかし、私の気持ちの中でのリアリ
ティはむくむくと獲得していくのである。

何をやるにも石橋を叩いて叩いて叩いていた棒がすっかり壊れてしまって前に
進めなくなる、極度の小心者の私だが、何にも考えずにとりあえず飛び込んで
しまいたいなー、と思う瞬間があって、いやそれは小心者故かもしれないが、
ここ最近は特にそれを感じる。

「とにかくやってみれば?」そんな背中を押してくれる何かを待っているのか
もしれない。このちょいと卑怯な小心者に、「何とかなるって」の勢いをもた
らしてくれる。この映画はそんな力を持っている。
迷っていることがある人、日常のささいなイライラが積み重なって息が苦しく
なってる人、ひょっとしたら、意外な出口を作ってくれるかもしれない作品!


おまけ
この作品で私が特に気に入った点、二点。

1.麦わら帽子からのぞくポニーテール、かわいい!
ヒロイン・ヤスナは、麦わら帽子に穴をあけて、ポニーテールの髪をそこから
出してかぶっている。
とっても愛らしくて、清楚でセクシーで、かつ元気に見える(ヤスナの姿形に
影響されてるけれど)。
ポニーテールができるほど髪の長い人はぜひやってみてください。

2.音楽!
クストリッツァ作品では、かつて、ゴラン・ブレゴヴィッチという、今もヨー
ロッパ映画界で活躍する作曲家が参加することが多く、その頃も好きだった。
本作の音楽は、ツァーネを助けてくれる祖父の親友の孫役で出演もしている、
監督の息子、ストリボール・クストリッツァが担当。バルカンの伝統的な哀愁
漂うメロディに、テクノをプラスした重厚にはじけたサントラ、私はずいぶん
聴き倒した。おすすめ。
サントラ「Promise Me This」


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・おおくぼ さま
『夏時間の庭』、気に入ってくださって、私もとってもうれしく思います!
ここのところ、観る映画の数ががたっと減っている私ですが、期待に応えられ
るよう、いろいろな作品に触れていくようにしますね。

・にゃんたろう さま
エリック・ロメール、今年は亡くなった年ということで、特集上映を組む施設
や名画座がいくつかあるようです。レンタルでは観られないものも多いので、
ぜひチェックしてみてくださいね。

★DVD
ウェディング・ベルを鳴らせ! [DVD]
★サウンドトラック
サントラ
Promise Me This

アフィリエイトリンクです。

★次回配信予定
6月の半ばくらいには時間ができるのではないかと思います。
その頃には「ほぼ週刊」といえるくらいには出すつもりです。
不定期でごめんなさい。

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日常のまぬけな話、意味のない独り言ばかりですが、
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